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2/17(日) 11:00配信
 
「永遠の2番手」を返上して四大陸選手権Vの宇野昌磨。
3月の世界選手権にも期待がかかる(c)朝日新聞社
 

 フィギュアスケート五輪銀メダリストの宇野昌磨が、ついに「シルバーコレクター」の汚名を返上した。2月7日~10日に開催された「四大陸選手権」で、フリーでルール改正後の世界最高点197.36点をたたき出し、ショートプログラム(SP)4位から逆転優勝した。

 右足首の捻挫の影響で万全ではない状態にもかかわらず、3本の4回転ジャンプを決めた宇野。フリーの最後には、感極まったのか、崩れ落ちるように、氷上に膝をついた。いい意味でこれまでの宇野らしからぬ様子に驚いたファンも多いが、長年宇野の取材をしてきたノンフィクションライターの田村明子さんは語る。

「この1年で、見違えるように精神的に成長しました。今回の大会では、けがのため、ほぼぶっつけ本番で試合会場に入りましたが、足の状態が悪くとも集中力で滑り切った。『今やらなくていつやるんだ』という気迫を感じました」

 変化はそれだけではない。記者会見では、「できない自分を抑えるために自分を信じるのではなく『自分はできるんだ』と、ただそれだけを思っていた」と、集まった記者たちが感心するほど、一流アスリートらしい、大人びた発言をした。

 そもそも宇野と言えば、平昌五輪の感想を聞かれて「特別な思いは感じなかった。1つの試合」「(選手村では)ゲームができているので満足」「(銀メダルに)さわりたい人はさわってくださいという感じ」と答えるなど、「天然発言」を連発していた。

 それが今大会では「ショーマ語録」は封印。ケガが続き練習不足の状態で大会入りしたせいか、SP4位で終わると「悔しいと言う権利は僕にはない」と唇をかみしめ、優勝後は、「1位になることは自分のためだけではなくて、他の人のためにもなるんだ」と支えてくれた周囲への気遣いをみせた。

 さらに、来る世界選手権への抱負を聞かれると、「1位にこだわる」と明言。かねてより「雲の上の存在」と語っていた羽生結弦超えを示唆した。
 

こうした宇野の変化について、田村さんは「これまでの宇野選手は、羽生選手を追いかける弟分。それは楽に違いないが、いつまでも追っている立場ではダメだという『自覚』が出てきたのでしょう」と分析。世界選手権については「つらくても四大陸選手権を乗り越えたんだという自負が彼を支えるはず。すべての選手と堂々と渡り合えると思います」と期待を寄せた。

 「絶対王者」羽生も参戦が予定されている世界選手権(3月20日~24日さいたまスーパーアリーナ)。「憧れの人」を超えることができるか。宇野の覚醒の瞬間から目が離せない。


(本誌/工藤早春)
※週刊朝日 2019年3月1日号