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 11月9日、今季GPシリーズ第4戦目となるNHK杯が広島市で開催された。今年はNHK杯が創設されてから40回目ということもあり、例年にも増して盛り上がりを見せた大会となった。

 男子は本大会に初めて出場した宇野昌磨が、初タイトルを獲得。スケートカナダの優勝と合わせて、いち早くGPファイナルへの切符を手にした。

 SPでは『天国への階段』のフラメンコギターアレンジで、4フリップから演技を開始。多少前のめりになったが膝を深く曲げて耐えて降りた。だが次のコンビネーションを予定していた4トウループは回転しすぎで後ろに転倒。素早く立ち上がり、軸のきれいなスピン、そしてスケートカナダでは失敗した3アクセルをきれいに着氷し、スプレッドイーグルにつなげた。

 フラメンコのリズムに合わせた切れ味の良い身体の動きは、彼には次に行くべき空間が見えていて、そこに手の位置がぴたりとはまっていくような快感がある。コンビネーションの失敗はあったものの、92.49でトップに立った。

宇野、フリーもトップを保って初優勝。

 翌日のフリーでは、『月光ソナタ』冒頭の4サルコウは成功したように見えたが回転不足の判定。続いた4フリップ、そして4トウループときれいに決めていった。後半の4トウループ、そして最後の3サルコウでステップアウトしたものの、3アクセル+1オイラー+3フリップなど完璧にきめてフリー183.96を獲得。総合276.45でトップを保った。

「失敗が最初のサルコウ、コンビネーションと色々あったけど、後味の悪くない演技だったかなと思います」と手ごたえを語り、GPファイナルからシーズン後半にかけては「まだまだ質とか細かいところに達していない。まずはショート、フリーともにまとめるところからスタートしていきたい」と課題も口にした。

 

ベテラン、ボロノフ2位入賞!

 2位は、昨シーズンサプライズでこの大会で初優勝を決めたロシアのベテラン、セルゲイ・ボロノフだった。

 SPはラフマニノフの前奏曲ト短調のピアノの音色にあわせ、高さのある4+3トウループ、3ルッツ、最後の3アクセルとも無事に着氷。後半のステップシークエンスは日本の観客の手拍子に後押しされるようにして、ドラマチックに滑りきった。91.37と宇野とおよそ1ポイントあまりの点差で2位に立った。

 フリーでは冒頭の4トウループ、そして後半では2度の3アクセルを成功させて162.91を獲得。総合254.28で2位を保った。

 宇野の後、フリー最終滑走だったボロノフは、「2回(SP、フリー)とも、開催国の選手の直後の滑走で、楽ではありませんでした。でも今日は良い演技ができたと思う」と感想を述べた。スケートアメリカで3位だったボロノフがGPファイナルに進出できるかどうかは、他の選手たちの成績にかかってくる。

イタリア選手がGP初メダル!!

 3位は、SP4位から逆転したイタリアのマッテオ・リッツォだった。

 昨シーズンの世界ジュニア銅メダリストで、シニアGP大会は今シーズンが初挑戦の20歳である。フリーでは冒頭の4トウループで転倒したが、持ち直して3アクセル+2トウループなど、6度の3回転ジャンプを降りた。「(前の試合の)スケートアメリカでは4位という結果にハッピーだった。ここでの結果はすばらしいこと。でも内容には満足していない。もっと良い演技ができるので」

 イタリアの男子がGP大会でメダルを獲得したのは、今回が初となる。

 SP3位だったロシアのディミトリ・アリエフはフリーでジャンプのミスが重なり総合5位に。アメリカの若手、ヴィンセント・ジョーが総合4位だった。

 

日本の山本は6位、佐藤が10位に。

 NHK杯初挑戦の山本草太は、SPは『G線上のアリア』のメロディにのり、きれいな3アクセルから演技を開始。軸のきれいなコンビネーションスピンなどを見せていたが、3ルッツの着氷で片手をついて続いたトウループが2回転に。74.98で6位スタートになった。

 フリー『信長協奏曲』では、出だしのアクセルが一回転半になってしまったが、次の3アクセルは成功。3ルッツ+3トウループ、3フリップなどにつなげて降りていった。ルッツで誤ったエッジでの判定がつくなど細かいミスもあったが、身体を大きく使った切れ味の良い振付で観客を魅了し、総合213.40で6位となった。

 昨シーズンに続いて2度目の挑戦だった佐藤洸彬は、フリーの冒頭で4トウループ、3アクセル+2トウループと快調なスタートをきったが、後半の3度の転倒が響いて総合10位だった。

今季の男子はベテラン勢が健闘。

 GP第4戦目を終えて、今シーズンの男子はベテラン勢の健闘が続いている。スケートアメリカとヘルシンキ大会で2位になったチェコのミハル・ブレジナ、スケートカナダで2位だったキーガン・メッシング、アメリカ3位、本大会2位だったセルゲイ・ボロノフなど、いずれもGPファイナル進出の可能性がある。

 その一方で、今季あたりあがってくるだろうと予想されたドミトリー・アリエフ、ビンセント・ゾウ、そして中国のボーヤン・ジンなど期待されている若手たちは苦戦している。

 残り2戦でどのような展開が待っているのか、楽しみである。

 

・ 2018.11.9 - 11.11 2018 NHK杯 国際フィギュアスケート競技大会