「ありあまるほどの、幸せを」 259 | 空に揺蕩う 十時(如月 皐)のブログ

空に揺蕩う 十時(如月 皐)のブログ

BLは十時 その他は如月 皐で個人的に小説活動しています!
どうぞ見に来てください!

「価値観が違うアシェルや私に資金援助を頼むより、夫人の髪飾りや宝飾品を売る方がよほど確実に金が手に入ります」

 違法なほどではないので取り締まることもないが、近頃の羽がついた髪飾りや光ものは高価にすぎる。それでも貴族がこぞって欲しがるからと足元を見ての価格なのだろうそれは未だ需要が途絶える様子は見えないので、たとえ使用済みであったとしてもそれなりの値段で売れるだろう。

「しかし……、貴族である以上なに一つ宝石を身につけないというのも面子が立ちませんし、特に髪飾りは今、貴族の夫人の間でとても流行っているのです」

「それは知っています。知り合いの近衛たちなどは夫人たちの髪が倒れそうなほど高く結い上げられているので観劇の際に苦情が入ったり、普段ならありえない事故などが多発しているので大変だと話していましたから」

 最初は少し高く結って大きな飾りをつけていただけの装いが、他人よりも目立ちたい、美しく装いたいという人間の欲望ゆえか、時が経つにつれ結い上げる髪は頭二つ分を超える高さとなり、帽子や造花などで飾り立てられた。その流行の最たるものが大きな羽のついた髪飾りだろう。

 民家ならば余裕で一軒建てることができる金額の髪飾りを頭につけて歩く夫人たちの姿はあちこちにみられるが、流行を追いたいがために借金をする心理をルイは理解することができない。中には借金を返すことができず社交界から姿をくらました者もいるくらいだ。