「ありあまるほどの、幸せを」 255 | 空に揺蕩う 十時(如月 皐)のブログ

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「その、私が侯爵位を継いだ祝いと披露目のパーティーをしようと、妻が申しておりまして……」

「夫人からお聞きしました。私が公爵位を継いだときにもそのようなパーティーはしましたから、こちらとしても予定があえばロランヴィエルとして二人で伺おうと思っておりますが」

 参加を気にしているのであれば、確約はできないが前向きに検討していると告げる。しかしウィリアムはそれに感謝の意を示すものの浮かない顔のまま視線を彷徨わせていた。

「参加してくださるのはありがたいのですが……、いえ、本当に。ロランヴィエル公爵に来ていただければ、我が家としても誉となりますから。ですが、その……、パーティーをつつがなく行うためにもアシェルと話し合いたいと思いまして」

 ウィリアムが何をアシェルと話したいのかなど、たとえルイ出なかったとしても容易に想像できる。メリッサに釘を刺したというのに、あまり効果はなかったかとルイは僅かに目を細めた。

「その件に関してはジーノ殿と話し合われるのでは? それに、夫人にも申し上げましたがアシェルは既にロランヴィエルの人間。たとえ公爵家といえど他家のパーティーに口出すなど無作法にすぎるでしょう。そのようなことはアシェルも、私も、そして陛下や王妃殿下もお望みではありません」

 言い終えると、ルイは音もなく一枚の書類をウィリアムに見せた。それは以前、公爵印が必要だと屋敷に戻った際、メリッサの姿を見て必要だと感じラージェンに作成してもらった正式な書類。婚約の状態である今であっても、アシェルは既にルイと婚姻していると同等の立場であると認めるものだ。これにより、仮に今ルイの身に何かあれば遺産はすべてアシェルに渡され、公爵の伴侶――ロランヴィエルの名を名乗ることが許される。つまりアシェルは書類上、すでに〝アシェル・リィ・ロランヴィエル〟になったと言っても過言ではない。