「ありあまるほどの、幸せを」 128 | 空に揺蕩う 十時(如月 皐)のブログ

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「久しぶりだなアシェル。ま、最後に会ったのは君が子供の時だから、君からすればはじめましてかもしれないが」

 三男とはいえアシェルの生家は侯爵位だ。確かに父とリゼルに交流があったとしてもなんらおかしくはない。記憶にないほど小さい頃を知られているという恥ずかしさはあるが、アシェルはそれを隠して胸に手を当て礼をした。

「閣下にご挨拶申し上げます」

 本来であればリゼルの方が位は高いのだから、アシェルこそが彼の手に口づけをするべきなのだが、公爵となったルイが位の低いアシェルに最初から口づけているので、そこに拘るのは愚問だろうか。貴族として上下を厳守しなければと生真面目なアシェルは思うが、どうにもロランヴィエル家を相手にすると調子が崩されるばかりだ。

「そう堅苦しくしないでくれ。遠慮なく、私の事はお義父様と呼んでくれて良いんだ」

 どうやら思考回路も親子で同じらしい。アシェルは思わず遠い目をしたが、ルイはニコニコと微笑んだままで助け船を出してはくれなかった。

(それもそうか。だって同じ思考回路してるんだからな)

 うっかり朝の濃厚すぎる口づけや、身支度の間にされたあれこれを思い出して思わず頬を赤く染める。いけない、と首を振って記憶を追い出そうとしている姿にリゼルは不思議そうに首を傾げ、ルイはクツリと笑った。