「ありあまるほどの、幸せを」 107 | 空に揺蕩う 十時(如月 皐)のブログ

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「あんまり兄妹水入らずの時にお邪魔するのはどうかなと思ったんだけど、ジーノとアシェルが揃って来るっていうことは厄介ごとかな? と嫌な予感がしてね。なんといってもルイとアシェルの結婚が決まったこの時だから」

 流石は国王と言うべきか、それとも超愛妻家と言うべきか。彼の予感は見事に的中している。

「フィアナが困るというなら、彼女の側で支え守るのが筋だ。私は王であるが、同時にフィアナの夫だからね」

「流石はラージェン。まさに理想の夫ですわね」

「ふふふ、そうだろう?」

 仲が良いことは素晴らしいことだ、なんて思わず遠い目をしていれば、テーブルの下でルイがそっと手を握ってきた。視線を向ければ、何が楽しいのかとても穏やかに微笑んでいる。

「私も〝あなたにとって〟の理想の夫になれるよう努力しますから、何でも言ってくださいね。困りごとなら尚更に、どうか頼ってください」

 確かに、ルイはジーノと違って既に爵位を父親から受け継いでいるので動きやすいだろう。言われていることもありがたく思いこそすれ、邪険にするようなものではない。けれどそれが胸をざわつかせ、逃れるように握られた手を引いて視線を逸らせた。