「ありあまるほどの、幸せを」 81 | 空に揺蕩う 十時(如月 皐)のブログ

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「流石にあなたのお部屋を一階にすることはできませんから階段をこのようにさせてもらいましたが、勢いがついても危ないですから基本的には遠慮などせずに私か使用人に声をかけてくださいね」

 このバーチェラには身分によって変わる決まり事が山ほどある。王都における屋敷を構える場所や大きさから始まり、馬車の大きさ、衣服の装飾の有無なんかもそうだ。そして城であれ屋敷であれ適用されるのが、身分による階の決まりである。

 夜会や舞踏会を行う大広間、皆と食事をする食堂、温室、主人の側近くに仕える執事や侍女の部屋が一階。主人やその伴侶、子供の部屋や寝室といった私的な部屋、書斎や図書室、読書や裁縫などに使う小さな部屋が二階。調理場や倉庫、側仕えでない一般的な使用人の部屋が地下だ。これは明確に決まっており、どの屋敷でも適用されている。ノーウォルトの父が一階にいるのは緊急時に素早く対処できるようにという配慮で例外中の例外であるが、アシェルが玄関ホールから私室、父親の部屋にまで自由に一人で行き来できたのは、多くを語る必要も無いだろう。