「ありあまるほどの、幸せを」 61 | 空に揺蕩う 十時(如月 皐)のブログ

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「あなたを生涯愛し、守ると誓いましょう。私と結婚して良かったと、心の底から思っていただけるように。ですからゆっくりと、ロランヴィエルで私との時間を知ってください。――さて、陛下」

 もはやアシェルの言葉など聞く気はないのか、それとも無言は肯定などと恐ろしい思考回路でもしているのか、ルイはもう一度アシェルの手に口づけを落とすと、優しい眼差しで見守っていた王に向き直った。

「陛下は此度の任務の褒美を下さると仰ってくださいました。第一連隊隊長ルイ・フォン・ロランヴィエルは、恐れながら陛下にお願い申し上げます。私とアシェル・リィ・ノーウォルト殿の婚姻をお認め頂きたい」

「ラージェン・ノア・バーチェリアの名において認めよう」

 まるでアシェルに異論を挟ませまいとするかのような速さで王が婚姻許可を宣言する。アシェルがポカンと口を開いて固まっている間に貴族から拍手を送られ、これが最後だったのか式典の終了が告げられる。ニコニコと機嫌よさそうに微笑むフィアナの命令で侍従が車椅子を動かし、アシェルが正気に戻った時にはすでにこぢんまりとした応接室のような部屋に通された後だった。正面には満面の笑みを浮かべながら紅茶を飲む妹がいて、アシェルは思わず恨めしい視線を向ける。