民進党新代表はホントに蓮舫氏で決まりなのか? 出馬見送り、蓮舫氏支援に転じた細野豪志氏に怒りの声続出…
清宮真一の野党ウオッチ2016.8.16 01:00



 民進党代表選(9月2日告示、15日投開票)を前に、立候補を表明した蓮舫代表代行が“独走状態”に入りつつある。「仕分けの女王」などで広がった知名度に加え、非主流派内の対抗馬擁立が難航しているためだ。ただ自ら名付けた「蓮舫路線」も、野党共闘や憲法改正をめぐっては現時点で岡田克也代表が敷いた路線とほぼ変わりなく、岡田氏と距離を置く非主流派からは「執行部を一新できるのか」といった不満も渦巻く。決して視界良好とは言えないようだ。

 「党内の有力者やグループを回って、どのグループとも政策やスタンスが一致するなんてあり得ない。彼女は二枚舌なのか」

 ある民進党関係者は、5日に代表選への出馬を表明した蓮舫氏を念頭にこう漏らした。

 蓮舫氏はこれまで、旧社会党系グループを束ねる赤松広隆前衆院副議長のほか、旧民社党系グループに強い影響力を持つ川端達夫衆院副議長、党内派閥「自誓会」会長の細野豪志元環境相らと会談。岡田氏が道筋をつけた共産党との共闘路線や憲法改正などをめぐって意見交換を重ねてきた。

 先の関係者は、同じ民進党内とはいえスタンスにそれぞれ差異がある各グループとの会談を重ねても、意見の違いや衝突が露見しない蓮舫氏の“八方美人”ぶりを皮肉ったのだ。

 ただ党執行部のメンバーであり、岡田氏を支持する野田佳彦前首相のグループ「花斉会」に所属する蓮舫氏が、岡田体制の抜本的見直しに踏み切ることはないという見方が、党内では強い。

 現に5日の出馬会見でも、「岡田色」の払拭を意識してか、自らの路線を「蓮舫路線」と打ち出し、提案型の政党を目指す考えを強調したものの、代表選の焦点になるとみられる共産党との共闘関係に話題が及ぶと失速。「綱領や政策が違うところとは一緒に政権を目指さない。野党連携のあり方についてはこれまでの基本的枠組みは維持しつつ、検討を必要とする」と述べ、岡田路線の踏襲をにじませた。

 「憲法9条は絶対に守る」と公言した姿勢は、現執行部のスタンスと変わらない。岡田氏が参院選後に安倍晋三政権下での改憲論議の禁を解いたのと呼応するように、蓮舫氏も「平和主義」「主権在民」「基本的人権の尊重」を維持した上で、必要に応じ地方自治の条文を対象に党内で議論していく方向性を示した。

 こうした蓮舫氏の態度に非主流派は「蓮舫氏が代表になっても、党の刷新にはつながらない」と反発するが、肝心の蓮舫氏の対抗馬擁立に向けては足並みがそろっていない。

 これまで細野氏の自誓会と大畠章宏元国土交通相の「素交会」、旧維新の党グループの3派は蓮舫氏の無投票当選を回避するため、党執行部人事を一新できる候補者の選出を目指して調整を続けてきた。

しかし6日に開かれた3派会合で細野氏が突然、蓮舫氏支援を明言。同席していた素交会の鹿野道彦元農林水産相はたまらず「出て行け!」と怒声を上げ、細野氏と素交会、旧維新の党グループとは決裂状態になった。

 素交会に所属する中堅議員は「細野氏にはしごを外された。政治家に求められる最低限のモラルを分かっていない」と恨み節を漏らす。

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 3派間での候補者調整が進まない中、「凌雲会」グループを束ねる前原誠司元外相が赤松氏らと意見交換し、出馬に意欲を見せる。前原氏は推薦人20人の確保に苦戦する中、雑誌「世界」(今年9月号)での対談で「憲法改正が『最重要課題』とは考えていない」と明言。憲法改正に前向きなスタンスから一歩下がり、幅広い支持を得ようとする姿勢に、リベラル系の赤松氏のグループ内では「前原氏も政治家だ」と評価する声も上がっている。

 ただ党内からは「旧民主党時代に代表を経験し、世代交代とは言えない」「この代表選に出て勝たなければ、もはやグループが持たない」といった指摘があり、「行くも地獄、引くも地獄」のジレンマに陥っている。非主流派は17日以降に再び候補者調整の動きを再開する見込みだが、蓮舫氏を打ち破るハードルは相当に高い。

(政治部 清宮真一)