62年に初めて大蔵大臣に就任したとき、
大蔵大臣となった角栄を前にすると
なにもしゃべれなくなったそうである。

大蔵省に着任すると、訓示をした。

大講堂に集まった職員たちは、
値踏みをするとうに新任大臣を見た。

職員たちは東大卒で、
さらにその中でも財務のエキスパートである。

エリート中のエリートだ。

角栄の演説が始まる。

「私が田中角栄だ。
ご承知の通り小学校高等科卒だ。

諸君は天下の秀才揃いで、財政のエキスパートだ。

しかし、私は素人ながらトゲの多い門松を
くぐってきたので、実際の仕事の要領は心得ている。

仕事を上手くやるには、互いのことをよく知る
ことが大切だ。

大臣室のドアはいつでも開けておくから、
上司の許可は得なくても良いので話に来てくれ。

出来ることはやる。出来ないことはやらない。
仕事は思いっきりやってもらいたい。

責任はこの田中が持つ。以上。」

拍手喝采だったそうである。

最初は斜に構えていたエリート中の
エリートたちも、
角栄に圧倒されてしまった。

この後も、事あるごとに角栄の世話になり
生涯の忠誠を心に決めた者もいた。