ギリシャアテネのパナシナイコスタディアムは、近代オリンピックが最初に開かれた場所だ。
新国立建設に携わる人は、一度この大理石で作られた伝統ある場所へ行って、オリンピックの原点を考え直すべきではないか。
シンプルでかつ独特の威厳と伝統を感じさせるこのスタディアムは、オリンピックムーブメントが立派な施設や最新の設備ではないことを静かに伝えてくれる。
北京五輪のメインスタジアムは、今のレートで約700億円、当時は500億円で建設された。
当初の屋根付きの計画は、重い屋根を支える構造物が予算の大幅な増大を招くとして、急遽中止され、当初の収容人数も8万人(大会時9万1千人)と大幅に縮小された。
巨大な鋼鉄のカゴ状の構造物は輸入鋼材を止めて国産の鋼鉄で作るため、新たなスチール材料を調達(開発)し、大幅にコストを削減した。
大会の観客席のイスや照明、音響、大型映像装置、セキュリティ、通信、床材など、ゼネコンとオーナーがスポンサーを募って可能な限り寄贈してもらい、必死で国家体育場(鳥の巣)を作り上げた。
国や政府も17日間のオリンピックに莫大な費用をつぎこむことに対する国民の批判をうけないよう、最大限の倹約の努力をした。
TOPスポンサーもローカルスポンサーもマーケティング権利を主張はしながらも一緒になってスタジアム建設の費用の削減に協力し、智恵をしぼった。お金がない、だから智恵を絞ったのである。
2020年東京五輪は、メインスタジアムの建設ですでにIOC(国際オリンピック委員会)が打ち出した新たな大会運営の方針「アジェンダ2020」の最悪のケースの一つとなりつつある。
2000年当時、巨大なスタジアムを建築設計できる会社は世界に2,3社しかいないと言われた。日本のゼネコンもその中に1社入っていたが、その中に大成も竹中もないし、失われた20年でゼネコンはその能力を失っているのではないか?
2500億円とか3000億円って、実はお断り見積りではないのか?本当は建設する技術がないのではないか?でなければ、これほど巨額の見積りにはならないはずだ。技術大国を自負するニッポンが技術力で恥をかかないように切に願いたい。安く作るのもまた技術力だからだ。
最後に、メインスタジアムは何かと横やりが入るため、新築の場合、伝統的に完成が遅れる。散々散財したあげく、ラグビーワールドカップでは使えない、約束した時間を守れないニッポン、工期の遅れによる膨らむ予算があるなら、なぜフクシマの復興に使わないのか、と世界中のマスコミにたたかれないようにしたい。オリンピックでかく恥はその五輪の知名度とともに世界中に拡散するからだ。