📖 前回のあらすじ

他クラスへの調査の結果、タイムスリップしているのは「6年3組の40人だけ」と判明。手紙の追伸に書かれた「3月20日の卒業式に40人全員が揃っていれば現代へ帰れる」という条件を確認し、一同はひとまず安堵するのだった――。


【第12話】五十年ぶりの通学路


みんなの言葉を聞きながら、学級委員長の松田さんがもう一度、クラス全員を真剣な目で見つめた。

「そうね。今日はとりあえず、それぞれの……家に帰りましょう。みんな、これから家に帰ったら、若い頃の両親や兄弟に会うと思うの。現代ではもう亡くなっている親に会う人だって、きっといるはず」

松田さんの言葉に、教室の空気が少ししんとなった。

「……感情的になりそうだけど、そこは変に意識しないで、自然に接してね。絶対に、現代の出来事なんて喋っちゃダメよ。当時の12歳の頃をよく思い出して、その通りに振る舞うこと。それで、何か気づいたことがあったら、明日また学校で報告し合いましょう」

松田さんは黒板のチョークを置くと、みんなを優しく見渡した。

「じゃあ、今日はみんなで一緒に下校しましょう。50年も前のことだから、自分の家への帰り道が分からなくなっている人がいるかもしれないじゃない? もし忘れてたら、お互いに教え合いましょう」

「助かるわぁ……。俺、中2の時に引っ越したから、ぶっちゃけ自分の家の方角すら怪しかったねん……」

宮本が苦笑いしながら、黄色いカバーのついたランドセルを背負う。

「私も中1の時に引っ越したから、昔の通学路の目印なんてすっかり忘れてるかも……」

水野さんも少し不安そうに、赤いランドセルを両肩にかけた。

「よし、じゃあ帰るぞ!」

片山がいつも通りの少しお調子者な声を上げて、ガラガラと教室のドアを開ける。

俺も、机の中から**『ティレル』の6輪F1がデザインされた筆箱**をランドセルにしまい、しっかりとパッチンと蓋を閉めた。引き出しの奥の茶封筒は、誰にも見つからないようにズボンのポケット深くへと押し込む。

「木暮、一緒に行こうや」

太陽が、いつもと変わらないあの人懐っこい笑顔で、俺の肩をぽんと叩いた。

「おう、太陽。帰ろか」

12歳の声を出しながら、俺の胸は激しく高鳴っていた――。