📖 前回のあらすじ
手紙の追伸に記されたルールを確認し、松田の号令でひとまず自宅へと帰ることに。「亡くなった両親にも会うことになるが、現代のことは絶対に話さず自然に振る舞うこと」という注意を胸に、一同はランドセルを背負い下校の途につく――。
【第13話】昭和51年、平岡の街へ
10年前に見送ったはずの親父とお袋。2016年にあの世へ旅立った二人が、今、実家の玄関を開ければ、まだ若くて元気な姿で「お帰り」と言ってくれるのだ。そう思うだけで、目頭が熱くなりそうになる。
俺たちは40人全員で、夕焼けに染まり始めた鉄筋コンクリート造の校舎の階段を降りた。ひんやりとしたコンクリートの感触と、窓から差し込むオレンジ色の光が、廊下を長く照らしている。
懐かしい校門をくぐり、俺たちはそれぞれの家を目指して、昭和51年の平岡の街へと歩き出した――。
当時は団地や市営住宅に住んでいる奴が多く、帰り道も自然といくつかのグループに分かれていく。
「じゃあ、私はこっちの棟だから。みんな、明日の朝、遅れないようにね」
学級委員長の松田さんが、夕日の中にそびえ立つマンモス団地の敷地へ入っていく。
当時はどこの団地も子どもであふれかえっていて、敷地内の公園や広場からは、ゴムボールを蹴る音や高らかな笑い声が絶え間なく響いていた。階段を駆け上がっていく松田や片山の背中を見送りながら、俺たちはそれぞれの帰路についた。
水野と宮本、そして俺は、少し離れた平屋の市営住宅が並ぶエリアへと歩を進める――。