📖 前回のあらすじ

土曜日の朝。家族との涙の再会を報告し合う一同に、宮本は「昭和のバーモントカレーの匂い」と父親の思い出を語り、教室の空気が和らぐ。学級委員長の松田が「40人全員で現代へ帰る」決意を新たにしたその時、クラスメイトの内田が慌てて駆け込んできた。「今村が『昨日2026年の話をしてたよな』と言ってきた」という内田の言葉に、健一たちの緊張が一気に走る――。




【第24話】            格闘技世界戦と、土曜日のチャイム


「「「ひょっとして、今村も……!?」」」

松田が身を乗り出した。

「内田君、詳しく教えて!」

「他のクラスにもいたんだ……!」

水野も目を丸くする。気がつけば、事情を知らないクラスの連中まで「何事だ」と集まってきてしまった。

狼狽える内田。

「いや……健一、後で話すわ……」

「今話せよ! みんなの前で話せよ、大事なことだろ!」

周りのクラスメイトから口々にヤジが飛ぶ。松田も腕を組んで詰め寄った。

「内田君、もったいぶらないで言ってちょうだい」

内田は集まったみんなをちらちらと見回すと、観念したように口を開いた。

「あの〜……今村に言われたのはな……『もう中学生になろうとしているのに、そんな未来の話をしてどうするねん。それより、6月にやるアントニオ猪木対モハメッド・アリ、どっちが勝つと思う? 俺は絶対、猪木が勝つと思う!』って……」

一同、静まり返る。

「……ハーン? 何を期待させて言ってきてんねん! 全然関係ないやろが!」

宮本が盛大にズッコケた。

「今すぐ俺が言いに行ったろうか!? 『ドロー(引き分け)や! 猪木が寝そべって蹴り入れて戦って、当時はえらい批判食らうんやぞ! その戦い方をした理由も教えてやろうか!』ってな!」

片山も呆れ果てて腕を組む。

「なんだ……ガッカリ」

松田と水野が肩を落とした。健一が内田の肩を小突く。

「お前な……そういう話はこっそり俺に言えよ」

「ごめん……。ちなみに今村な、『中学卒業したら俺、プロレスラーになって本物のタイガーマスクになるから誰にも言わんといてな』って……。まあ現代で本当に出てくるんやけど……絶対、今村じゃなかったな! はっはっはっ!」

「「「アホかーーーっ!!」」」

教室中に豪快なブーイングと爆笑が巻き起こった、その時――。

キーンコーンカーンコーン……。

昭和五十一年二月二十一日、土曜日の朝のチャイムが校内に響き渡った。

当時は土曜日も「半ドン(午前授業)」があった時代だ。

「よし、席につけよー」

ガラガラと教室の引き戸が開き、出席簿を小脇に抱えた大喜多先生が入ってくる。

中身は六十二歳の大人が繰り広げる、昭和五十一年二月の本格的な学校生活が、いよいよ幕を開けた――。