📖 前回のあらすじ

熱血指導が裏目に出て仲間と衝突してしまった三郎。教室で「令和の時代、余命一ヶ月で病室にいたこと」「卒業後に家族がバラバラになってしまった過去」を涙ながらに告白する。せめて学芸会で本気の姿を見せ、オカンと家族を守りたいという三郎の切実な想いに、教室は静かな感動に包まれるのだった――。


【第51話】

  涙の理由(わけ)と、ズボンの穴


夕暮れの教室。三郎の涙ながらの告白に、誰もが胸を打たれ、静かに目頭を熱くしていたその時だった。

ガラガラッ!

「なんや! メロスの練習はどうした? 体育館におらへんから探したぞ」

ハイライトのタバコ箱を片手に、担任の大喜多先生が教室に入ってきた。ふとみんなの顔を見回した先生が、怪訝そうに眉をひそめる。

「……なんや片山、お前泣いてるんか?」

三郎は慌てて手で顔を拭うと、そっぽを向いた。

「別に……泣いてません」

「嘘つけ! 女子全員泣いてるやないか。誰や、泣かせたんは?」

大喜多先生が腕を組んで見回すと、学級委員長の松田裕子と佐藤美由紀が慌てて首を振った。

「い、いえ! 誰も泣かされていません!」

「泣いてるやないか。……宮本! お前まで泣いてるんか?」

先生に指名された竜二(宮本)は、大慌てで両手で目を覆った。

「あっ、いえ! 目にゴミが入っただけで……あー痛っ! 目が痛いわー!」

大根役者のような白々しい芝居に、俺(健一)は思わずクスッと笑いながら口を挟んだ。

「先生、涙は『心の汗』です」

大喜多先生は呆れた顔で俺を睨みつける。

「はぁ? お前は中村雅俊か!」

昭和の大ヒットドラマ『われら青春!』の名台詞が出たところで、クラスのエース・太陽がポンと手を叩いた。

「さあ!『泣く練習』は終わり! もう一回、練習しに講堂(体育館)に行くか!」

「行くかー! 内田、木の気持ち教えてくれな!」

竜二が笑いながら内田の肩を組む。内田は「なんで俺が……」と困り顔になりながらも、どこか嬉しそうだ。

日活ロマンポルノ専門だった看板描きの木村琢磨も、照れくさそうに鼻をこすった。

「ふん、背景描き直してやるか。これでギャラが倍やな!」

ぞろぞろと体育館へ戻ろうとする生徒たちを見て、大喜多先生はホッと息を吐いた。

「なんや、泣く練習してたんか。大ごとにするな、びっくりさせんなよ」

三郎も目元を拭い、みんなの後を追おうとしたその時――。

「片山、ちょっと待て!」

大喜多先生の声に、全員の足がピタリと止まる。

「片山……お前、ズボンのお尻破れてパンツ丸見えやぞ!」

「えっ!?」

三郎が慌てて後ろを振り返ると、ズボンの割れ目から白いパンツがバッチリ顔を出していた。三郎は顔を真っ赤にして、両手でお尻をギュッと隠す。

「木村先生(家庭科の先生)に縫ってもらってこい!」

「あっ……はい! 行ってきます!」

三郎はお尻に手を当てて、ひょこひょことダッシュで職員室へ走っていった。その情けない後ろ姿に、夕暮れの校舎に響き渡る大爆笑が巻き起こる!

「「「あははははーっ!!」」」

「三郎、本番前に破くなよー!」

「メロス、お尻出てるぞー!」

さっきまでの涙はどこへやら。バラバラになりかけた六年三組の絆は、三郎の破れたズボンとみんなの笑い声によって、再びひとつに重なり合ったのだった――。


本日も最後までご覧いただき、ありがとうございました!

「涙は心の汗だ!」というフレーズ、昭和49年放送の『われら!青春』思い出しますね。


それでは、また次回の『六年三組のタイムカプセル』でお会いしましょう。

サヨナラ、サヨナラ、サヨナラ……!