📖 前回のあらすじ
下校道で50年前のバレンタインの思い出話に花を咲かせる男子たち。三郎、健一、太陽がチョコを獲得していたことが判明する中、竜二だけは「ゼロだった古傷」を突かれて大慌て。みんなと別れ、一人になった竜二の胸に込み上げてきたのは――。
【第三十八話】 宮本の独り言と、五百万円の愛
「ちくしょう……なんで俺だけゼロやねん……」
健一たちと別れた帰り道。宮本は一人、真冬の寒風が吹き抜ける道をポツリポツリと歩いていた。手袋の中で握りしめた拳が、虚しく震える。
「……うーん、太陽はわかる。あの爽やかさやし、脚が長くてモデル体型や。あいつがモテるのはぐうの音も出ん」
ポケットに手を突っ込み、宮本は大きく溜息をついた。吐き出した白い息が、冬の空に消えていく。
「健一も……まあ、まだわかる。あいつは昔からちょっと俺よりシュッとしてたしな。納得はいかんが、まあ許したる……」
そこまで呟いた宮本は、急に足をピタッと止めた。険しい顔で空を仰ぎ、声を荒らげる。
「……解せへんのは三郎や!! あんな角刈りで! 四六時中『アチョー!』『ワチャー!』って怪鳥音ばっかり叫んでて! おっちょこチョイで落ち着きのない奴のどこがいいねん! あんな角刈り!本物のブルース・リーちゃうわ! ドリフの志村の後ろで『すわ親治』がやってるブルース・リーのコントとおんなじや! カトちゃんの『イ〜ックション!』で派手にズッコケるやつやろがい!!」
宮本はぶんぶんと頭を振った。
「そうや……絶対そうや! きっと太陽の机に入れるつもりが、隣の三郎の机に間違えて入れたんや! うん、うん、絶対にそうに決まってる! そう思わなやってられんわ!!」
自分を納得させるように強く頷いた宮本だったが、やがてフッと自嘲気味な笑みを浮かべた。
「……ふん、ええねん別に。バレンタインのチョコなんて、十二歳の子供の遊びや」
ランドセルのベルトをギュッと握りしめ、宮本は遠くの夕焼け空を見つめた。
「どうせ俺には、現代(2026年)に帰ったら俺より三十歳も若い嫁の咲ちゃんがおるんやからな! どうだ、凄いやろ!……言っておくけど、騙されたわけちゃうぞ」
宮本の脳裏に、令和の時代に置いてきた愛しい妻・咲ちゃんの笑顔が浮かぶ。
「俺が経営してる居酒屋が上手くいかなくて、五百万円の借金を背負って途方に暮れてた時……『一緒に借金返したい』って言って、俺と一緒になってくれた最高の嫁なんや。俺がいなくなったら、咲ちゃんは身寄りが無くて一人ぼっちになってまう……」
冬の夕風が、宮本の短い髪を揺らす。
「待ってろよ、咲ちゃん……! 俺はこんな昭和で油売ってる場合ちゃうねん。絶対に現代へ帰って、お前を幸せにしたるからな……!」
十二歳の少年の姿をした六十二歳のおじさんは、涙をぐっと堪え、夕日の中を力強く走り出したのだった――。
今日も最後までお付き合いいただき、 ありがとうございました!
すわ親治さん懐かしいですね
私はドリフの7人目のメンバーと
思ってます。(長さん、ブーさん、カトちゃん、注さん、工事さん、けんさん、親治さん)
それでは、また次回の『六年三組のタイムカプセル』でお会いしましょう!
サヨナラ、サヨナラ、サヨナラ
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