📖 前回のあらすじ
手持ち最後の10円玉を前に悩む内田に、竜二と健一は「クリアできなきゃ2026年に帰れないと思え」と無茶振りをかます。女子たちの冷ややかな正論を跳ね除け、「救世主」とおだてられた内田は、全員の運命を背負って新幹線ゲームに挑むのだった――!
【第三十六話】 新幹線ゲームの結末と夕暮れの帰り道
チャリン。
10円玉が投入口に入り、スタート位置の「東京」にセットされた。
ギャラリーの視線が一斉に手元に集まる。内田の指が、静かに一段目のレバーにかかった。
(行くぞ……!)
バシッ!
レバーを弾くと、10円玉が滑らかな軌道を描いて転がり――見事に一段目をクリアした!
「ヨッシャー! 一段目成功!!」
「やるやん内田プロ! よーし、落ち着いて行けよ!」
男子連中から歓声が上がる。内田はゴクリとツバを飲み込み、二段目のレバーに指をかけた。
バシッ!
10円玉は絶妙な勢いで坂を駆け上がり、二段目もクリア!
「やった! やるとは聞いてたけど、ついに新大阪まで来たぞ!」
竜二が自分のことのように大はしゃぎする。内田はフゥーッと深く息を吐き、額に浮かんだ汗をそっと手拭いで拭った。
続いて三段目。ここには途中に穴や障害物があり、最大の難所とされている。
内田の目が鋭く光る。慎重に、かつ思い切りよくレバーを弾いた!
カタカタッ……パシッ!
10円玉は見事に障害物をかわし、三段目を突破した!
「うおーーーッ! 内田! お前はマジで救世主や!!」
男子たちのテンションは最高潮に達する。内田も自信に満ちた表情で頷いた。
「六年三組の運命は……俺にかかってる! ゴールはもう目と鼻の先や!」
そして、運命の四段目。
汗ばんだ指で、内田は最後のレバーを弾いた――。
「あっ……!?」
バチッ! 力が入りすぎたレバーから弾き出された10円玉は、勢い余ってガイドを飛び越えた。
「「「えっ……!?」」」
女子たちも思わず「やだ!」と声をあげる。
――カランコロンカラン……。
無情な音を立てて、10円玉はゲーム機の底へと吸い込まれていった。
……一瞬の静寂。
「あーあ……やっちゃった」
「なんやねん、救世主ちゃうやんけ〜」
手のひらを返したように竜二や三郎が脱力した声を漏らすと、すかさず美由紀が二人を睨みつけた。
「ちょっと! 宮本君、片山君ひどいよ! 自分たちがプレッシャーかけたんじゃない!」
「そうよ、内田くん惜しかったじゃない!」
松田も美由紀に同調して怒り、内田はガックリと両膝を地面につき、涙目になって悲鳴をあげた。
「お前らが調子乗せるからやってしまったやないかい!! 本当は……本当はチロルチョコとベビースター買うだけやったのにーっ!!」
地面を叩いて悔しがる内田に、薫がにこにこと手元を示した。
「そうだよ、内田くん。私、さくらんぼ餅あるから半分あげる!」
「あ、私もポン菓子ちょっと分けたげるわ」
裕子も笑顔で袋を差し出す。内田は顔を上げ、鼻をすすりながら「ほんま……?」と呟いた。
健一がポンと内田の肩を叩き、手を差し伸べる。
「立ち上がれ救世主。また今度リベンジしたらええやんか」
「……おう!」
健一の手を掴んで立ち上がった内田を見て、竜二がばつ悪そうに頭をかきながら、夕焼けの空を見上げてパンパンと手を叩いた。
「よし! もう夕方や、親が心配するから帰るぞー! 内田、途中まで一緒に帰ろな」
「「「おー!」」」
オレンジ色に染まる夕暮れ道。
みんなで駄菓子を分け合い、内田の「あと一歩だったプレイ」をあーだこーだと笑いながら語り合う。
タイムスリップして初めて迎えた日曜日は、昭和の風の匂いと、仲間たちの温かなぬくもりに包まれて静かに暮れていくのだった――。
今日も最後までお付き合いいただき、 ありがとうございました!
10円ゲームあれ難しいですね
私も一度もクリアできなかったです。
もし出会う機会が有れば10円握り締めて
挑戦したいです。(^^)
それでは、また次回の『六年三組のタイムカプセル』でお会いしましょう!
サヨナラ、サヨナラ、サヨナラ
📖 第1話から読む方はこちら
