📖 前回のあらすじ
現代(2026年)から昭和51年へとタイムスリップした健一たち。金曜日の夜、各自の家へと帰ったメンバーは、すでに亡くなっていた父親や、若き日の両親との涙の再会を果たしていた――。
【第二十一話】
引き戸を開ければ、昭和51年
「おはよー!」
ガラガラと引き戸が開く音とともに、爽やかな男、沢田太陽(ひなた)が、朝のまぶしい光を背負って元気に教室に入ってきた。
「おう、太陽。おはよ」
俺が声をかけると、太陽は白い歯を見せて笑い、いつものように自分の席へと向かっていった。太陽のあの屈屈のない姿を見ていると、今が昭和五十一年だということを一瞬忘れてしまいそうになる。
大喜多先生が教室に入ってくるまでのわずかな時間、俺たちはまた静かに顔を見合わせた。
「みんな……昨日はどうやった?」
学級委員長の松田が、他のクラスメイトに聞こえないよう、さらに声を潜めて切り出した。
「私は……お母さんも弟も、50年前の姿で普通にそこにいた。現代ではもう車椅子のお母さんが、ちゃんと自分の足で立って料理を作ってて……。未来のことは何も喋らなかったけど、ご飯食べるだけで涙が出そうだった」
松田の言葉に、水野が深く頷いた。
「私も……」
水野は少し目を腫らした顔で、小さな声で言った。
「玄関を開けたら、お母さんが小走りで出てきて……。奥には、2016年に亡くなる前、私の顔も忘れてしまっていたあの優しいお父さんが、ちゃんと私の名前を呼んで笑ってくれたの。嬉しくて、涙を『目にゴミが入った』ってごまかすのが精一杯だった……」
水野の涙ぐむ姿を、いつもならおちゃらけてからかうはずの片山が、今日ばかりは真剣な、どこか遠くを見るような目で見つめていた。