📖 前回のあらすじ

団地の実家へ帰った片山三郎。元気な12歳の体でヌンチャクを振り回す片山だったが、実はこの1ヶ月後の卒業式の日に両親が離婚し、家族がバラバラになる運命を知っていた。「絶対にこの家族を守る」と、片山は12歳の小さな拳を強く握りしめた――。



【第20話】学級委員長の誓い


【マンモス団地:松田裕子の家】

階段を四階まで駆け上がり、懐かしいスチール製のドアを開けた学級委員長の松田裕子は、玄関に一歩入った瞬間に足を止めた。

「お帰り、裕子。遅かったじゃない。また学級会?」

台所から顔を出したのは、四十代前半の、まだ髪をきれいにセットした若々しい母親だった。

現代の二〇二六年では、老人ホームで車椅子生活を送っている母親が、エプロン姿でシャキシャキと動いている。

「お父さんね、今日は仕事で遅くなるんだって。だから先にご飯にしちゃいましょうね」

「……うん、分かった。ただいま、お母さん」

裕子は必死で声を震わせないように答えた。

リビングに入ると、そこには当時流行っていた重厚な木製のステレオセットがあった。

そして、その前の畳には、まだ小学生の頼りない姿をした弟が寝転がり、テレビ漫画『カバトット』の再放送を見ながら声をあげる。

「お姉ちゃんお帰りー! 今日のご飯、ハンバーグだって!」

現代では五十代の立派な会社役員になっている弟が、十歳の無邪気な笑顔で振り返る。

裕子はランドセルを下ろすと、小さく深呼吸をした。

(絶対に未来のことは喋らない。自然に、自然に……)

そう心の中で何度も自分に言い聞かせながら、愛おしさを誤魔化すように、弟の頭を少し乱暴に撫で回した――。