📖 前回のあらすじ

学級委員長・松田の号令により、この世界全体が巻き戻っているのかを確かめるため、クラスメイトたちは一斉によそのクラスへと探りを入れるべく散っていった――。


【第十一話】残された40人のルール


――15分後。

全員が息を切らせて3組の教室へと戻ってきた。集まったみんなの顔は、一様に青ざめていた。

「……ダメや。1組の奴に聞いたら、普通の顔で『今は昭和51年やろ、頭大丈夫か?』って笑われたわ。……その後、いきなり『ガキデカ』のポーズ決めて『死刑!』ってやり出しよった」

「えぇ……」

報告を聞いた数人が、複雑な顔で声を漏らす。俺も思わず、苦笑いを通り越して少し引いてしまった。

確かに俺たちが12歳の頃、クラスの男子の半分はあのポーズをやっていた。50年ぶりに『死刑!』は、猛烈に懐かしかったけれど、中身が62歳の俺たちには、見ていて少し気恥ずかしいというか、なんとも言えない痛々しさがあった。

「5組の友達も、2026年のことなんて何一つ知らなかった。……でも、なんか懐かしかったな」

松田が黒板に**【 1組〜6組:異常なし(昭和51年) 】**と大きく書き加える。

「つまり……巻き戻っているのは、この世界の中で、私たち『6年3組の40人だけ』ってことね」

教室に重苦しい沈黙が流れた。その時、俺は意を決して、引き出しの奥からあの茶封筒を取り出した。

「みんな、ちょっとこれを見てくれ」

俺の声にハッとしたみんなが、一斉に俺の机の周りへと集まってくる。松田さんが手紙を覗き込み、そこに手書きで付け加えられた『追伸』の文字を声に出して読み上げた。


『私たちは、3月20日に卒業式を終え、最後の授業を受けます。その日になれば、みなさんは無事に現代の2026年へ戻ることができます。


ただし、条件があります。

40人全員が、一人も欠けることなく揃っていなければ、現代へ帰ることはできません』


「3月20日……。黒板の日付は2月20日だから、タイムリミットまでちょうどあと1ヶ月。その日に全員が揃っていれば、元の時代に帰れるってことね」

「40人全員、か……」

宮本が腕を組み、神妙な顔で呟く。

「なぁに、簡単なことやろ。用具室に集まった瞬間から、俺たちは一人も欠けずにここに揃っとる。このまま1ヶ月、誰も風邪とかひかんように普通に過ごせばええだけやんか」

「そうよ。みんなで体調管理に気をつけて、3月20日を迎えましょう」

水野も少し安心したように、 優しい笑顔を浮かべた――。