📖 前回のあらすじ
手紙に書き加えられた『追伸』には、現代に戻る方法は「3月20日の卒業式を終えた後の最後の授業を受けること」、そして「40人全員が揃っていること」だと書かれていた。謎の胸騒ぎを覚えながら、健一は教室の隅でノートを取る太陽の背中を見つめていた――。
【第10話】この世界はどうなっている?
キーンコーンカーンコーン……。
5時間目の授業が終わると同時に、大喜多先生が教卓をパシャリと叩いた。
「よし、授業終わり! お前ら、さっきのいたずらのバツや。今日は全員居残りで、教室の隅から隅までピッカピカに掃除していけ! サボったら明日は倍やからな!」
「えーーーっ!?」
クラス中から(半分は演技で、半分はあの頃のままのノリで)ブーイングが上がる。大喜多先生は満足そうに笑いながら、出席簿を脇に抱えて教室を出て行った。
先生の姿が見えなくなると、教室の空気は一変した。
誰からともなく、教室の隅にあったほうきや雑巾を手に取り、せっせと床を掃き始める。中身は62歳の大人だ。バツの掃除とはいえ、油の染み込んだ懐かしい木床を磨く作業に、みんなどこか没頭していた。
「みんな、ちょっと集まって!」
掃除が一段落した頃、教室の前方で声を張り上げたのは、学級委員長の松田裕子だった。
現代では企業コンサルタントとして、関西のテレビでコメンテーターをしているのをよく見かける。12歳の姿になっても、その圧倒的な統率力は健在だった。松田は黒板の前に立ち、チョークを手に取ってクラス全員を見回した。
「みんな、落ち着いて聞いて。私たちは今、声も身体も完全に12歳に戻って、1976年の教室にいる。でも、中身は全員2026年までの記憶を持ったままでしょ? これが私たち3組だけの現象なのか、それとも学校全体、世界全体が巻き戻っているのかを確かめたいの」
松田は黒板に大きく線を引いた。
「今から全員バラけて、よそのクラス……1組から6組までの友達に、それとなく探りを入れてきて。終わったらまたここに集合!」
「了解!」
松田の号令で、クラスメイトたちは一斉に教室を飛び出し、隣のクラスや廊下へと散っていった。俺や宮本も、当時の記憶を頼りに他のクラスの知り合いのところへ向かい、それとなく声をかけに行った――。