電車とバスを乗り継いで通っていたお稽古場に、自転車で通う決心をした娘。

その道のりがかなり遠いというイメージがあったので、私は少し心配になった。

彼女は地図を読んで空間認識するのが苦手な人。果たして辿り着けるのかしら?

とりあえず、一度私も一緒にグーグル片手にルート検索しながら、走って確かめる事にした。


なるべくシンプルな経路を選ぶと、大通りを走る事になる。大通りといっても、車道の道幅は狭く、自転車が走るのは危ないので、歩行者に気をつけながら、歩道を走る事にする。進行方向左手の歩道の車道寄りをゆっくり走るというルールを守れば、自転車も走る事が可能な道が続いていた。しかし、その歩道も狭い。歩行者がいる時には、自転車を下りて歩かないと、冷や冷やする。


「あー嫌な道だなぁ。他の道ないかなぁ。」

「そのうちに慣れてきたら、裏道がきっと見つかるよ。でも、最初は、分かりやすい道から行った方がいいんじゃない?とにかく無理しないで、シンプルなルートでゆっくり行くことだよ。」


その後、一人で一度大通りを走ってみたけど、やはり嫌な道だから、次回からは裏道を探すと報告を受けた。そして、二回目からは、よい道があったから裏から行く事にしたと聞いていた。


それから数ヶ月が経ち、今日久しぶりに娘と一緒に自転車でお稽古場へ出かけるチャンスがあった。

驚いた。

すでに裏道を見つけた事は聞いていたが、ここまで複雑な裏道を探し当てていたとは想像していなかった。


「ここからしばらく気持ちのいい道がつづくよ」と言って先導してくれた道は、美しい住宅街の伸びやかな道だった。途中、何度も右へ左へ曲がりながら走った道を、私は全く覚えきれなかった。

娘は道端の黒猫やお散歩中の犬や美しいお屋敷やお洒落な珈琲店などを楽しそうに眺めながら自転車をぐんぐん漕いでゆく。

娘の背中を追いかけて走るうちに、見慣れた大通りに出た。

「ここから先は裏道が無いから、この大通りを走るしかないけれど、まぁもう少しだから我慢だね」と言いながら振り返った娘に呼びかけた。 


「ねぇ、どうしてこんなに難しい道を見つけられたの?グーグル見ながら探したの?」

「え?あー何となく、こっちかなぁーと思う方へ走ってるうちに見つけたんだったかな。よく覚えてないなぁ。グーグルは、見ても分からないから見ないの 笑笑」

「そーなんだーーー。でもびっくり。こんな複雑な道をよく見つけられたね。しかも、よく覚えられたね。あのさぁ、いつも私とどこかに出かける時には、全然空間認識できてないのは、あれはなんで?」


「それは、お母さんに頼ってるからだよ。一人になれば、できるのよ。」

と、サラリと言った。


そうだったんだ。

娘は地図が読めないのではなくて、必要なかっただけなんだ。

きっと猫みたいに、本能的に行くべき道が分かる人なんだと思う。


自分の感覚を置き去りにしてグーグルに頼りっぱなしの私は、何だか自分が恥ずかしくなりました。


できないのではなくて、やらないだけ、なぜなら必要ないから。

それなのに、大人は

「この子は、これが出来ない。能力がない。」

と、決めつける。

そんな構図、よくある事ですね。

ハッとさせられた、今日の出来事でした。