― 第4話 ―


眠れない・・・


デジタル時計は AM 5:18 の文字を浮かび上がらせている。
新聞が玄関ドアのポケットにもぐり込む音がした。


眠れない・・・何故だ?
その理由は俺が1番よく知っている。
1ヶ月前のことが頭から離れないのだ。
ブログのメッセージでのやり取りである。


―― 1ヶ月前のメッセージのやり取り


愛しの樹莉亜さんへ


貴方と初めて出会ってから約1年、いつも楽しく、また癒していただいております。
いきなりこんなことを言って、変な奴と思われるかもしれませんが思いっきって言います。

樹莉亜さんは今幸せですか?

樹莉亜さんはご主人のことを愛していますか?

俺は独身で家庭をもったことがないので分からないのですが、
夫婦っていつまでたっても愛し合えるものですか?


最近よく離婚経験者いわゆるバツイチの方と出会います。
離婚をした方が良いとは思いませんが愛し合えない夫婦でいるよりは、新しい愛を求めた方が
良いこともあるのではないかと思います。


「何を生意気なことを言って!」
と思われることでしょう。
しかし人生は1回しかないのですよ!
人生という名のドラマの主人公は自分以外あり得ないのです。
その1回の人生をどれだけ有意義に生きれるかが、その人にとって、最大の幸せにつながるのではないかと思います。


間違っていますか?
間違っているなら教えて下さい!

俺は樹莉亜さんのブログを見ていて勝手ながら
本当にご主人と愛し合っているのか疑問に思うことがあります。
もしそうだとしたら貴方は不幸です。
俺がなんとかしないといけないと思うのです。
貴方に癒される俺はそう思うのです。
メールの返信、お待ちしております・・・

               しゅうより


俺はバカだった。
こんなメールを送るなんて・・・
こんなメールを送れた樹莉亜さんが傷つくのは当たり前のことだ。
だからあんな返信のメールが返ってきたんだ・・・




 ― 第5話 ―


―― 樹莉亜さんからの返信メール


樹莉亜です。


しゅうさん!?
何が言いたいのかな?

わたしは幸せよ。

愛し合っているかって聞かれたら 難しいな・・・
でも間違いなく情はあるよ 主人に対して。

ひとくちに ”愛” っていうけど”愛”って色々あると思うよ。
男女の恋愛感情 = 愛 では無いと思う。

わたしが思う人に対しての ”愛 ” はね・・
その人に対してする言動が、他の人から見れば大変で、苦しく、辛いことであっても

当の本人はまったくそのようなことを感じることが無く、喜びさえ感じるものだと思うの。
これはあくまでもわたしの考えだけどね。


しゅうさんは結婚を怖がっているのかな?
結婚って,考えれば考えるほど出来ないものよ。
結婚をしないといけない法律はないけれど、
しゅうさんが言っていたように人生は1回こっきりよ。


いろんな経験をしなくちゃ
そうでしょ・・・


わたしに何が言いたいのか分からないけど、100%ではないにしても、少なくとも今の生活には
そこそこ満足してるよ。
心配してくれてるなら大丈夫よ。 わたしは・・・。

しゅうさんも結婚して幸せな家庭を築いてくださいね
陰ながら応援してるよ、して何でも相談してね。
女性としての立場でアドバイスするよ

がんばってね!

これでいいのかなー 返答は?

もう遅いので寝るね。

今日はしゅうさんと一緒に寝ます。

おやすみなさい・・・

         
                     樹莉亜より


   

     


       ― 第6話 ―




俺は何故であんな訳の分からないメールを送ったんだ!
目が冴えて仕方なかった。
目を瞑ると樹莉亜さんからのメール文が頭の中を駆け巡る。
結局ほとんど眠ることなくいつもの起床時間になっていた。

まだであろうが、昨日のメールの返事が樹莉亜さんからきていないか、

確認するためにパソコンを立ち上げた。

心臓をバクバクさせながら画面を見た。


・・・・・きていない。


昨日、正確には今日の深夜に送ったところである。
来ていなくて当然である。何も落ち込むことはない。
睡眠不足で頭がボーッとしていたが、いつも通りに中央線快速東京行の電車に乗り込んだ。
そして、いつものように樹莉亜を探した。


―――顔を知らないだろ!?という声が聞こえてきそですが、しゅうは本当に探しているのです。
    どういうことかというと、電車に乗った40歳くらいのマダムを物色しているのです。


ブログの内容によると樹莉亜さんは通勤のため、同じ中央線快速東京行の電車を利用している。
多分八王子辺りから乗り、俺が乗り込む荻窪を通って新宿まで行くのだ。
俺はいつも同じ車両に乗っている目星をつけたマダムが新宿駅で下車するかを確認するのだ。

しかし、目星をつけたマダムが新宿駅を下車してもその人を追いかけることはしない。
ストーカーではないのだから・・・。


ただ俺は、樹莉亜さんはどれだ?と、探すことを楽しんでいるだけである。
変なヤツと思われるかも知れないが、事実でなので仕方がない。



しゅうの務める会社の事務所――――


今日午前中は、パソコンに向かい単純な作業を行なっていた。
当然ながら睡魔が俺を襲った。瞼が強力な磁石で吸い寄せられるようにくっつきそうになる。
自分の意志ではどうにもいかないのだ。
ついにチカラつきた。
ズルリとイスからおしりがずり落ち、そのまま事務所の床に正座をするような格好で座り込んだ。

事務所の人全員の注目を浴びた。

「おい!西川!どうした!!」課長の声がかすかに聞こえる。

ほんの少し開いた瞼と瞼の隙間から周りを伺った。
事務所のほとんどの人の顔を確認することができた。



        



       

                  次回に続きます