殲滅する為に大量破壊兵器、焼き払う、などしていたのが被害の拡大によってそれらの工場が動かなくなる、何より世界的な拡大の為に燃料、エネルギーを作り出す事が困難になり、殲滅するより誘き寄せて隔離、閉じ込める方法を取るようになる。
期限切れより新鮮な物、新鮮な物より加工された物、発症前の好みが現れるのか襲う対象にかたよりがあるのを利用した。だが、それさえも無駄にする事が出来なくなり、死体に香辛料や化学調味料を振り燃やした。
その頃には、どちらが閉じ込め隔離されてらのかわからない状態、今のシェルターの形になった。
生き残った人々は限られた物資やエネルギーを厳しく管理して外界からの脅威だけでなく毎日をどう生き残るかギリギリのバランスで過ごす事になる。
攻撃することが出来なくなり、どう感染を防ぐかの選択肢、感染者や死体との接触、体液の接触が、次第に感染者の距離を考慮するようになってきた頃には、外に出ない物の発病の原因を探ろうとはせず、人々は這い上がれない穴の底から地上を見上げている、もう戻れないという感覚を感じていたが、産まれてまもない子供が発病したのをきっかけに空気感染する、いやもう皆んな感染していて発病するのは時間の問題ではないか?という現実を直視する。
そうして、空気感染などないとする疑似科学のような民間療法にすがるカルト達と、感染しているなら残った時間を自由にさせろという暴徒じみた連中に別れて対立する。どちらも共通するのは既に人間らしく生きる事を放棄していて、感染発病せずとも外のゾンビ共と同じ道を辿るのは時間の問題で、絶望の中でもせめてもっとましな絶望を選ぼうという少人数はシェルターを抜け出したのだった。
廃墟、みたいだな。
彼は最初にそう感じた。高度な文明を維持出来ない技術になった今、高層ビルやハイウェイと呼ばれたもの、かつて人が住んでいたであろう建物は、のきなみ風雪にさらされ朽ちはて残骸になり廃墟になっている。とは言え彼が抜け出してきたコミューンは、その残骸から掘り出し搔き集めて作り上げた街で廃墟のようなものなのだが。
それでも人がいて手が加わって、そこに命の気配を漂わせ、ガラクタの寄せ集めだが、死んではいないのだ。
彼の廃墟"みたい"という感想は、この町の死んではいない気配を感じたからで、つまり。
「ちょっと待ってくれ。何かおかしくないか?」
「なんだって!!?」前を向いたまま男は叫んだ。
「何がおかしい!?食料もない弾薬もあとわずか、仲間も居ない!俺たちには何も無い!」
振り返る男に、そっと近づき、
「大声を出すな、ゾンビが集まってくる。いや、この街の有り様は」
「手入れされてるな、それぐらい俺にもわかるわぞ!ゾンビじゃないとしたら他に生き残りがいるんだろう?
だからどうした!?そこに居るのがゾンビだろうと、一見して棄てられた街を作った生き残りの人間だろうと、俺たちの取る行動に違いがあるか?」
「おい、やめろ」
「どっちだろうが、やられる前にやるだけの話だろう!」
「子供がいるんだ、
「だからどうした?何から守るってんだ?おい。俺たち3人もう終わってるのかもしれねんだぞ?」
「パパ…」
「大丈夫だ、
おい、それ以上喋るならここでお別れだ」
「…どっちだってかまわねぇさ。1人で死ぬかそうじゃないか、今なのかちょっと先なのか…オマエ俺についてきて後悔してるんだろ?」
「…それは違う。私もこの子も2人でも出てきた。お互い、あそこにいたらロクでもない事に巻き込まれるから出てきた、そうだろう?確かに生き残ったのは私達だけだが覚悟の上だろ」
「……。」
廃墟に入っていく男。
シェルターの中で狂った母親が生きた家族を子供に与えているのを目撃した。それがキッカケで遁走を決めたのだが、それだけでなく彼の正気も無くなる原因にもなっている。
あの中で死ぬのだけは避けるべきだった、いや、まだ教えなければいけない事が山ほどある。人生の喜びや楽しみ、その殆どはこの世から無くなってしまった。それどころか、もう既に生き残る方法も無くなりつつある、明日をも知れない命になった。
せめて、この子には、人としての命を全うさせなければいけない。