実在したデイビット・ヘルフゴットというピアニストの人生を描いたもの。

私はとにかくデイビットの父ピーターに釘付けでした。
ユダヤ人のポーランド系移民で、強制収容所で両親を亡くし、
オーストラリアでも苦労しているよう。
幼い頃から音楽の道を志すも、父の猛反対にあったみたい。
ユダヤ教の教えは実はよく分からないのだけど、
それも含めてピーターのあの頑固さや負けん気や
強さや弱さが形成されているんだろうな。

秀逸だったのは、
デイビットの新聞記事のスクラップブックを眺めて微笑むところと
デイビットが勘当同然で英国留学することになり、そのスクラップブックを焼き捨てるところ。
父の愛と怒りの表現が見事です。

つまりデイビットは、そういう父の影響をモロに受けた、心の繊細な天才ピアニストなんです。
音楽大学のコンペ最終選考で、父の夢であるラフマニノフの3番を選んじゃうあたり、
オーストラリアに戻ってきて、父に電話をかけるあたり、
父のお墓の前で、「何も感じない」と言ってみちゃうあたり、
デイビットの中の父の存在の大きさが伺えます。

でもそれを上回る音楽への想いがあの、トランポリンのシーンの表情になるんでしょうな。
また、女史が言う様に言葉で表現できないものがピアノで表現されているということですよ。

私、予告編を見るまで気がつかなかったんだけど、
「Shine」というのは「誰を輝かせるのか、誰に輝かされるのか」という問いかけなんだってコト。
ヒトは周りのヒトとの関わりあいのの中でこそ輝けるんだよね、と改めて考えてみたりして。