ゲド戦記Ⅱ 『壊れた腕輪』 The Tombs of Atuan


人間の内面が非常に丁寧に描かれています。

アルハが
「悪の奴隷となっていたずらに費やした歳月を悔やんで泣き、自由への苦しみに泣いた」(213頁)
この箇所で涙が出ました。

幼い頃から闇に使える大巫女として、閉ざされた世界で生きてきたアルハ。
突然手に入れた自由の重さに耐え切れず、そして未知なるものへの不安から人生を放棄しようとする。
そんなアルハにゲドはこう言うのです。
「いいかい、テナー、よく聞くんだ。あんたは確かに邪なるものの器だった。
 だが器はあけられた。ことは終わって、邪なるものはその自らの墓に埋められたんだ。
 あんたは、決して、残酷や闇に奉仕するために生まれてきたんじゃない。
 あんたはあかりをその身に抱くように生まれてきたんだ。」(219頁)

まだこの時点でテナーはその意味を実感できないだろうけど、
やがて生きる意味や喜びに気づいていくのだと思う。
ここにもキリスト教的教えが感じられますね。
ゲドもⅠからⅡの間にずいぶん大人びた印象です。

『ICO-霧の城-』の時も思ったけど、
我が子が数年後に宗教的犠牲になることが分かっていながら
育てる親の気持ちってつらいですね。
テナーの母の愛、不器用な父の言葉。ここも涙ものです。