大劇場千穐楽も終わりました。
さて、今回の大劇場
お芝居やショーの舞台はもちろんなのですが、個人的にもなかなか興味深くいろいろな角度から面白い一ヶ月ちょっとでございました。

まずは大劇場卒業されたお三方
天真みちるさん。新菜かほさん。桜舞しおんさん。
ご卒業おめでとうございます。
そしてありがとうございました。

『MESSIAH(メサイア) −異聞・天草四郎−/BEAUTIFUL GARDEN −百花繚乱−』

お芝居『MESSIAH(メサイア) −異聞・天草四郎−』は、なんせ日本の史実物。
実在の人物を描くというので調べすぎたのが良くなかったのかもしれません。
私の中で出来上がっていた人物像がありましたからね。

そしてやはり私はこの四郎が好きではありません。
民衆を、戦略も戦術も無く戦う意味すら見出せない戦いに突き進ませ全滅させた彼が好きではありません。全滅という結果がわかっているから、そこへ持っていくための四郎にしかみえません。

あの恍惚とメサイア出現に酔いしれるキリシタンたちと共に右衛門作がいて。
まぁ、『リンカーン』でのあきら先輩もそうだったのですが、この図式が原田先生お好きなんだなぁと思うわけです。
『リンカーン』では奴隷解放へ向かうターニングポイントではありますが、所詮はただの政敵の敗北です。しかし今作では、この場面が直接の「死」に直面していくわけで、更に宗教が絡んでくるため、重さが全然違ってくるんですよね。

素晴らしい舞台美術や存分に使用される機構。美しい楽曲。自然な場面転換。静と動。盛り上がるクライマックス。そして役者の使い方。本当に男役さんたちの使い方が上手い。下級生までちゃんと印象的な場面が与えられ、少ない時間場面台詞なのにそれぞれがちゃんと魅力的に客席に届く。
原田先生の凄さがわかる今作。見る所はたくさんあります。
がゆえに、何故この題材だったのかと惜しまれます。

原田先生の書かれた信綱の台詞は全部なんだかなぁ?と思うのですが、その最たるものが「此度の戦さ何故におこした」
「いくさ」と信綱(幕府)が認め敵方の前で口に出すという軽率さに聞くたび違和感ありまくりでした。
秘密裡の会談の本音トークであれば、鈴木に「首一つ百姓一揆で収めようとされる伊豆守様のお情け無にするでないぞ」の台詞入れよう、そうすれば次の場面での四郎と右衛門作の「キリシタンの反乱などあってはならぬことだからな」の台詞も唐突感なくスムーズに受け取れるようになる。
でないと信綱があまりにも迂闊すぎるんですよね。
この台詞たちで知恵伊豆といわれてもなぁ。
まぁ、隙間も多いので水美さんにはがんばって埋めてもらいましょう。

今回、ちょっとお話する機会があった方々、幾人かの方々に「信綱の涙」についてどう思うか訊かれました。
に書いたのがすべてなのですが、付け加えるとするならば。

水美さんが信綱を演ると知り、見に行きました彼の領地。
川越藩、そして忍藩。
それまでの領地である忍藩に彼のした業績はほとんど残っていませんでした。
ですが、この島原天草の乱の翌年に移封された川越では、城下町を整備し、農政を盛り立て、治水を行い、江戸との物流を盛んにして小江戸と呼ばれるほどにしました。そうした民政において彼が残したものが川越にはたくさんあり、島原天草の乱が彼に残した傷を見る思いがしました。
国を見て政治をしてきた彼が、原城を経て民へ向けての政治を改めて考え始めたと感じました。

あの上手花道で、葵の紋を背にした彼が決断し立ち上がってから20年。
国を見、民を見、彼は彼の出来る形で天草の民を背負ってきたのです。

共に育ち、共に日の本の平和を守って生きてきた家光が死に、殉死を囁かれ揶揄されながらも幕政の中心に居座わった信綱。この機に乗じて徳川の転覆を図る輩の計画を未然に防ぎ守る彼の脳裏に、今ここで徳川が倒れれば、あの原城で散った彼らへ顔向けが出来ぬと云う思いがなかったとは誰も言えない。
そして20年、信綱が守り続けた徳川の世を継ぐ次代将軍家綱。
幼い頃に将軍となり、一時は幕閣連の上奏に「左様せい」としか答えないことで「左様せい様」と呼ばれた家綱が、
はじめて信綱に逆らい右衛門作に「過去を改ざんすることなく残せ」との下知を行った。
驚くと同時に、この将軍であれば、今後の徳川政権、ひいては戦の無い世を続けていける。という確信が安堵が信綱の心に湧く。

あの上手花道で、葵の紋を背にした彼が決断し立ち上がってから20年。
走り続けた彼に一筋の涙を流させてあげる水美さんの優しさが私は大好きだ。

100人の役者がいれば100人の信綱が出来る中、この本でこの信綱に涙を流させる役者は何人もいないでしょう。
これが役者水美舞斗の個性です。
そしてそれが私はとても好きです。

…ってのは本当に私の妄想ですので、あまり本気にしないでくださいね。
実際は原田先生にかるーく「あ、ここで泣いてねー」って言われただけかもしれないし(笑)

と云うことで東の皆さん、水美さんの信綱をお楽しみに。


『BEAUTIFUL GARDEN −百花繚乱−』
まさに今の花組を存分に楽しめるショーです。
あまりにも水美さんが目立つ場面を与えられているので、ファンとしてはとても嬉しいショーなのですが、同時に、何故こんなことになっているのか?よく理解できない状況です。

ちょっと『sante』と比べてみましょう。
一番違うのが客席降り。
『sante』では下手通路17列くらいだったのが今回は上手銀橋前固定です。
そのかわり一人銀橋渡りがありません。だから歌も一曲歌いきっていません。蜂さんはロケットボーイだし、ひまわりは歌い継ぎ。お芝居でも歌ってない。
センター付近場面は『sante』ではあきら先輩相手の女役でした。
今回はセンターロケット、
明日海さん相手の牛(歌ちなつさん、相手役は仙名さん)
明日海さんと戦う剣闘士(貴族あきら先輩、相手役は光くん)
アイドル場面で光くんとシンメ(野口幸作先生ありがとうございます)
やっぱり出演者偏りすぎてでバランスが悪い感じ。
ダンスの振付がすごいので更に目立っています。
これは振付の先生方がここぞとばかりに振付けてくださったのかな。
誰よりも野口幸作先生ありがとうございますですね。

センター付近の場面が多くて、水美さんのいろいろな個性が見られる今回のショーですが、一番好きなのは紫のお衣装の男役群舞水美さんなのですよねー。

あそこのどんどん笑顔になる感じが、『ファンタジア』の「風に舞う花」を思い出させるのです。
Blu-rayにはほとんど映っていないあの水美さん。もちろんあの時とはまた違う水美さんなのだけど、あのまっすぐな踊る事が生きる事が大好きだと舞台上で大声で全世界に叫ぶようなそんなダンスが、本当に水美さんの魅力なのです。

ああ。東京行けないのが辛くなってきた。