「はしたなしと思はれたてまつ
らむとしも思はねど、いさや
心地も例のやうにもおぼえず
かき乱りつつ、いとどはかば
かしからぬひが言もや、とつ
つましうて」
など、苦しげに思いたれど、
「いとほし」
など、これかれ聞こえて、中
の障子の口にて体面したまへ
り。
(源氏物語 早蕨の巻より)
「薫」は、「中の君」が京へ引っ越す
のを手厚く補助します。お手伝いさん
たちは、とても感心しています。
薫
「私の悲しい気持ちを聞いて慰めて
ください。いつもみたいに仕切りを
隔てて、つめたく他人のように扱わ
ないでください。」
中の君
「つめたいと思われるようなこと
をしているつもりではありませんが
今日は気分がすぐれないうえに、
心が乱れていますので、失礼なこと
を言ってしまうかもしれないので…」
と、心苦しく思っているようですが
「薫さまが可哀想です」
とお手伝いさんたちは口々に言って
います。仕方なく中の君は、ふすま
の入口あたりで体面しました。
中の君は、薫をかなり警戒しているよう
です。ただ、お手伝いさんたちが薫を
応援します。
さて、薫はほんとにグチを聞いてもらう
だけですませるのでしょうか。
つづく。