みもろの 神なび山ゆ との曇り
雨は降り来ぬ 天霧らひ 風さへ吹きぬ
大口の 真神の原ゆ 思ひつつ
帰りにし人 家に至りきや
(万葉集3268)
神の住むというあの山の上から
真っ黒い雲が広がって来て、
突然どしゃ降りになった。空も
恐ろしげに薄暗くなって、風も
吹きすさんで来た。大口の
真神の原っぱを、しんみりと
寂しげに帰って行ったあの方は
無事に家に辿り着いたのかしら。
愛し合った翌朝、彼は少し悲しそうに
帰って行った。ああ、あんな冷たい
言葉を言わなければよかった。
もっと、やさしくしてあげれば
よかった。そんな彼に、雨風までも
冷たく吹き付ける。天の神さまは
わたしに怒っているんだわ。