大君のたくらみ | ゆうぎりのブログ

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万葉集と源氏物語から切り取っていきます。

何心もなく寝入りたまへるを

いといとほしくいかにするわざ

ぞと胸つぶれて、諸共に隠れな

ばやと思へど、さもえたち返ら

でわななくわななく見たまへば

灯の仄かなるに、袿姿にていと

馴れ顔に几帳の帷子をひき上げ

て入りぬるを、いみじくいと

ほしく、いかに覚えたまはむ

と思ひながら、怪しき壁の面に

屏風を立てたる背後のむつかし

げなるにゐたまひぬ。

 (源氏物語 総角の巻より)

 

「薫」は、お手伝いさんの「弁」に

今夜は、なんとか「大君」の寝室に

入れるように取り計らってほしいと

依頼しました。そして、弁は薫の依頼

通り、寝室へと導きます。ただ、大君

の寝室は、妹の「中の君」と同じなの

です。薫が寝室に入って来るのを察知

した大君は、すばやく逃げ隠れます。

中の君が何も気づかずにぐっすり

寝ているので、申し訳ない気持ちが

して、どうなることかと心配なので

できれば一緒に隠れたいと思って

います。かと言って引き返すことも

出来ないので、震えながら見ています。

そこへ、薫が、部屋着で、慣れた様子

で入って来ました。ああ、中の君は

どんなにか怖がっているだろうと

思いながら屏風の影に隠れて、座り

込みました。

 

大君は、本当は心の底では、「うまく

行った」と思っているのかもしれません。

もし、これで、薫と中の君が結ばれたら

大君の思惑どうりだからです。

 

もしかしたら大君は、弁たちの企てを

知っていて、その企てを利用して

二人を結びつけようとしているのかも

知れません。だから、薫が忍び込んで

来るのが分かっていて、素早く逃げる

ことが出来たのではないでしょうか。

 

さあ、中の君はどうなるのでしょうか。

つづく。