今のところ心配したほど降らないみたいです❄️



それではつづきをどうぞ





                         つづき㊸





流石にこれでは迂回してところで大した時間短縮にもならないし、日没間近で宵闇も迫って来ている。

危険を察したあなたは途中から車道へと進路を変える。


すかさずスマホを取り出し位置情報を確認したあなたは、ホッとした顔で微笑み、「この道で大丈夫だ」と教えてくれる。

「あと二時間くらい」だと付け加えて。


あと二時間…。


かなり下まで下りて来ていると思ったわたしは告げられた時間に心底がっかりする。


明らか気落ちしたわたしを見たあなたが、


「ここから先は道なりに進むだけ。

日没も近いから心配だけど、笑ちゃんが一人で頑張れるなら俺が先に走って駐車場まで行って車で迎えに来ようか?」


あなたの優しい提案に足の痛みが思わず「うん」と言わせそうになったけど、折角、二人で来ているのにこの先あなたと離れて一人で行くのは嫌だ。

それにここで諦めたりなんかしたくない。


「ありがとう。でも、大丈夫。

わたしが一緒だと時間が掛かって結局、迷惑掛けちゃうと思うけど、最後まで頑張りたい。」


「偉いね。じゃあ最後まで二人で頑張ろう。」


そう言うとあなたは自分のザックをガサゴソと漁りヘッドライトを二つ取り出し、そのうちの一つを手渡しながら、

「念のために用意して来て良かった。

やっぱり山は何があるか分からないから準備をしておくに限るね。

この先は車道で道に迷う心配はなくなったけど、その代わりに車が通る可能性がある。

街灯のない道を歩く時、一番大切なのは相手に自分の存在を知らせること。

もし、車のライトが見えたらまずは道の端に避けて、そして後ろを振り返りライトの光で自分の存在を知らせること。

暗くなって来て先の様子も分からないから、俺が先に行く。一列になって歩こう。」


車道に出て道幅も広がり舗装された道にすっかり安心したわたしはあなたと並んでそれこそ手を繋ぎながら歩きたいと思った。



どこまでも考えの甘いわたし。



冷静なあなた。



日も傾き辺りはどんどん暗くなって行く。



やがて、日が沈み、あっと言う間に暗闇に包まれる。

月明かりさえも届かない夜道をヘッドライトが照らす三十センチ先を頼りに歩き続ける。


静まり返った山の中、あなたと二人きり、何の音も聴こえない。



聴こえて来るのは二人の息遣いだけ。




一時間半ほど歩いただろうか?先を行くあなたが急に歩みを止め振り返る。


「危ないところだった。」


そう言って来た道を少し戻る。


真っ暗闇の中、駐車場に気付かず通り過ぎようとしていた。


午後五時二十七分。


二人はスタートした場所に何とか辿り着く。

安堵で自然に笑みが溢れる二人。


車に乗り込む前に泥で汚れた登山靴を脱ぐ。

寒さと疲労で身体が思うように動かない。

フラつきながら片足ずつ脱いで行く。

まずは痛みのある右足から。


それまで登山靴で強く固定されていた右足が一気に自由になる。


圧迫によって抑えられていたのか、気力で痛みを誤魔化していられたのか、尋常ではない痛みがわたしを襲う。


最早、踵など痛みで地面にすら下ろせない。

右足が付けずピョンピョンと飛び跳ねるように歩くわたしに、


「大丈夫?そんなに痛かったのに何で言わないの?

そう言う時は我慢しないでちゃんと言わなくちゃ。」


言ったところでどうなったのだろう?あんなに長い道のりをわたしをおぶって歩ける訳などないのに。


結局、言っても言わなくても同じなのでは?と思ったけれど、きっとそのくらいの信頼関係が必要だとあなたは伝えたかったのだろう。


「ごめんね。今度からはきちんと早めに伝えるね。」


と素直に謝るわたし。



この後はきっと、温泉に浸かって冷えた身体を温めるのだろう。そうすれば痛みも少しは和らぐはず。



そして身体を温めた後、今度はあなたの身体でわたしの心と身体は再び温められるはず。