斜めってる各章の表紙の字
「院長選挙」 久坂部 羊
相当なおふざけ小説である。途中でついニヤついてしまう。
各章ごとの表紙から
して、字がナナメっていたり、隅っこにあったりする。ツボったのは登場人物の名前で、
耳鼻科の医師が耳成功市(みみなしこういち)で、消化器内科の医師が伊調勘蔵
(いちょうかんぞう)だって。
大学病院のお偉いさんに上り詰めても、医師は金の
亡者であり、セクショナリズムの塊であり、内科は外科の悪口ざんまい、眼科と整形外
科は反目し合う、という図式のようである。これを読んでいると、医者への信頼が揺らい
でくる。
徹頭徹尾ドタバタだが、考えてみると最近の財務省のお偉いさんの不祥事
やらN大の不祥事やら、何だか喜劇的でさえある。大学病院の内情とやらも所詮そんな
ものなのかも・・・。ま、とにかく面白いことは確か。
「老いる勇気」 岸見 一郎
これから雪崩を打って後期高齢者となっていく団塊の世代向けのハウツー本だと思う。
ハウツー本の常として、するすると入って来るがするすると抜けて行ってしまう。
なので、キーワードに付箋を貼りながら読み返してみた。引き算思考はだめ。他者や
理想の自分と今を比較しない。先々の事を案じるな。今、ここ、を大切に。誰かに幸福
にしてもらったり誰かを幸福にしたりすることは出来ない。そうしたいなら、まず自分で
幸福になること。幸福と成功は違う。幸福の現れ方は、不機嫌と対極、つまり穏やか
であること。 この本は落ち込んだ時などに傍線を引きながら読むといいかも。・・と
値段を見たら、税別で1400円もするのか~。
「小屋を燃す」 南木 佳士
相変わらず暗いのだが、私はこの人の根暗な作風が嫌いではない。図書館にある著作
は全部読んでいるくらい。これは短編4編からなるが、小説ではなく例によって身の上話
である。 「畔を歩く」。こんなにあからさまに書いちゃって、この特定されている医者は
大丈夫なのだろうかとちょっと心配になる。二つ目の「小屋を造る」と最後の「小屋を燃す」
は、遊び仲間の老人たちと小屋を造り6年後にそれを壊す話。語り口が独特で、読ませる。
「四股を踏む」も過去の追想と、体調を崩した時のエッセイ。医者で作家という人は多いが
ここまで私事にこだわる人も珍しいと思う。私小説以外は書かないと断言している。
病院を定年退職して、これからどんなものを書いていくのだろう。
「小さな幸せ46こ」 よしもと ばなな
日常のふとした出来事が46こ。好きなように読めばいい本である。ちょっとほっこりしたい
時とか、何となく活字を追いたい時とか。この人は、たとえば「残念だ」というべき所を
「くらくらする」と言ってみたり、「一番良いなと思う」というところを「いちばんいいなとおもう」
と平仮名で書いてみたりする。そういうちょっとした表現の独特さが味を出している。![]()
「アンタイトル」 飛鳥井 千砂
面白すぎて一気読み。ある家族の話だが、姉はしっかり者で優等生で、弟はダメ人間と
いうありがちなパターン。長い間家を出ていた弟が突然連れて来た彼女が、クズみたい
な女・・・という出だしなのだが、結局人として一番まともなのがこの彼女であることが最
後にわかる。(あ、ネタバレ)
この姉は優等生過ぎて、人の弱さを笑って許す事
ができない。その真面目さと、ルールを守るかたくなさを見込まれて(?)上司と7年も不
倫を続けているという皮肉。終わり方がちょっと気になる。この姉は立ち直れるのか、そ
れとも崩壊していくのか。どうも人格に病的な問題があることを示唆しているようだ。
「石田三成の青春」 松本 匡代
表紙の絵が漫画チックなので、内容を危ぶんだが、読んでみたらなかなか面白かった。
石田三成については本にも散々書かれ、ドラマ、映画でもおなじみの人物だが、
ここでは佐吉と紀之介時代から石田三成、大谷吉継となって関ケ原でともに戦うまでの
二人の友情が軸になっている。そして新解釈も散りばめられている。歴史は事実とは限
らず、権力者に都合良く書き換えられていたりするから、新解釈は常に成り立つのだ。



