「トライアングル」 新津 きよみ

 

かなり面白かった。主人公には魅力を感じた。が、プロローグの後半分は、もっとずっと

後へ回した方がよかった。いきなり最初では、読み手には何のことか分からない。 

それと、終盤の肝心の部分の設定がいかにも安易に過ぎるのが残念。他の筋立てがい

くらでも考えられるだろうに、それはないだろう、という感じ。前半が面白かっただけに

惜しまれる。

 

 

「強力伝・孤島」 新田 次郎

 

大昔の文庫本。リサイクル本からもらってきた。新田次郎は「聖職の碑」「八甲田山死の

彷徨」「サウダーデ」を読んだくらい。この本には短編が6編入っている。強力伝はデビュ

ー作で骨太の山岳小説。山犬にまつわる話が2編あり、迫力がある。「孤島」は鳥島の

気象観測所に送り込まれた男たちの話だが、その劣悪な職場環境と、半年も一年も島

流し同然で家族の安否も知らされないという非人間的扱いに驚いた。

 

 

「タイド」 鈴木 光司

 

「リング」の貞子の弟が主人公。あの話は終わっちゃいないのだ。整然と綴られた文章の

行間から立ち上ってくる不気味さ。魂、呪い、怨念、死と再生、厄災、摩訶不思議。

いやー、気味が悪いな。そして、エピローグを読むと、この話は終わりがないのだと知る。

 

 

「ペンの力」 浅田 次郎   吉岡 忍

 

日本ペンクラブの前会長、浅田氏と、現会長、吉岡氏との対談。二人とも団塊の世代で、

小説家とノンフィクション作家との違いはあるが非常に話がかみ合っている。浅田氏は

自衛隊経験者であるし、戦争と国家について一家言ある作家。吉岡氏は世界中を飛び

回って紛争や事故の現場を見てきているから言う事に説得力がある。明治維新から、

日清、日露の戦争,大正のリベラリズム、昭和の大恐慌、満州事変、太平洋戦争と、

時系列での解説がとても分かり易く、頭の中が整理できた。カッカしてる所に出くわした

ら、まずそっぽを向いて、自分で考えろ、というのは大事な提言だと思う。

 

 

「地取り」 飯田 裕久

 

著者は警視庁捜査一課の元刑事で、警部補まで行った人だそう。これは小説家とし

てのデビュー作。元刑事だけに、専門用語(略語)がふんだんに使用され、刑事仲間

とのやりとりも現実味がある。が、実体験があるからといってそれを読者にどう伝える

かは、やはり小説家としての手腕が問われる所だろう。しかし殺人事件の捜査とは大変

なものだとつくづく思う。

 

 

「メイコの食卓」 中村 メイコ

 

お弁当作りや家庭料理、ホームパーティーや飲み会などの思い出話。レシピはまあ

大したものは書いてない。レシピ本じゃないし。共感できるのは、疲れて機嫌が悪く

なるまで料理を作るな、という彼女のポリシー。無理せずお金を掛けず、ありあわせ

でちゃちゃっと作るのがおうちごはんの正しいあり方だというのには賛成だ。

 

 

「言葉をかみしめて歌いたい童謡・唱歌」 由井 龍三

 

明治から昭和までの、名作とされる童謡・唱歌を(歌詞のみ)並べて、作詞、作曲者の

人となりや生涯を解説した本。老健施設の慰問演奏には童謡・唱歌が一番喜ばれる

ので、その歌の背景などを知りたくて借りて来た本だが、色々参考にもなり感銘も受け

た。ここにあるような、百年後にも歌い継がれているような子供のための歌が、果たして

今、どれだけ作られているだろう。

 

 

「世田谷一家殺人事件 侵入者たちの告白」 齊藤 寅

 

去年の暮にもこの事件の未解決を伝えるニュースがあり、犯人は今でもどこかで飲んだ

り食べたり笑ったりしているのだろうかと嫌な気持ちになった。この本、まるで小説のよう。

小説だったら良かったのに。こんな残忍な現実ってあるのだろうか。著者はフリーライター

で、警察関係者とも情報交換をする仲であり、人脈をたどりながら独自の取材を続けた結

果、犯人に肉薄したと称している。これが真実かどうかを判断する術は私には無い。気に

なったのは、警察組織の内部での、管轄外に対する敵意や無関心、情報を共有しようとし

ないシステム、それに都合の悪い事実は隠ぺいしようとする体質が書かれていること。

(まあどんな世界でもそうだろうが) 発表はされなくとも犯人の見当はついているのだろう

か。某国や某国を主とする若い外国人たちの「クリミナル・グループ」の犯行だという事に。

増加の一途をたどる若く貧しい外国人労働者と、平和で隙だらけの日本。何だか心配になる。

 

 ~以上~

 

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