おお、なんという美しく力強く語るピアノでしょう……。

田中希代子先生のラフマニノフの2番のピアノ協奏曲。


 


個人が購入させてもらいましたのは添付した現役盤ではなくメルカリでたまたま目について廃盤になっている分を入手した次第であります。




以前徳岡直樹先生がYouTubeで田中先生のことを取り上げておられたので気になっておりました。

この間(かん)、タワーレコードさんのモバイル、店舗で数枚購入していますがついぞ聞かず仕舞いですが今日CDのケースをコンパクトにするために手にしたので聞きました。


音質的にはステレオとは申せ、いささか……。ピアノの音が前面に出ている感じでオーケストラがモヤに包まれたくぐもった音になっていますが演奏が素晴らしいので聞き進めていくうちに気にならなくなりました。


第1楽章の力強さ、第2楽章の美しさ、第3楽章の格調高い表現……。最早今となりましては有名過ぎてここではこう、あそこではこうと決まりきった表現に食傷気味であることが否めない協奏曲ですが、田中希代子先生の深淵な演奏を聞いて他を圧する違いがあるように改めて感じます。


特に第2楽章は田中先生の真髄ではないでしょうか。このように品格高いピアノは他には知りませんし、オーケストラの伴奏、渡邊暁雄先生指揮、日本フィルも素晴らしいと思います。思いの木管楽器、フルートの美しさが耳に付きますし丁寧に奏でているようで、ああ渡辺暁雄先生らしいなあと感慨深くなりました。


兎角格別なラフマニノフでした。久方ぶりに聞いた名曲ですが、田中希代子先生の才能を満喫できた演奏でした。


カップリングのベートーヴェンの32番のピアノ•ソナタはより田中先生のピアノをより近くに感じるられるように思います。

渋く、力強い……32番と申せばポゴレリチさんの若き日の名盤がありそちらもあまりの凄さにしばし呆然としたことを記憶しています。



ポゴレリチさんと比べ田中希代子先生は重い表現でベートーヴェンらしさを感じます。どちらとも素晴らしいですが、ポゴレリチさんの演奏が耳に残っている自身には田中先生の演奏は真面目過ぎるように響いたのは確かです。



こうして遺された録音を聞きますとご病気のために早期に第一線から退かれたことが本当に悔やまれてなりません。