長年、朝比奈隆先生の生涯最期の演奏会を聞いてみたい、聞いてみたいと想いを馳せていました。
2001年10月24日、愛知県立芸術劇場コンサートホールでのオールチャイコフスキープログラム。
・ピアノ協奏曲第1番(ピアノは小山実稚恵先生)
・交響曲第5番
5番の交響曲は非売品のCDがありますが、なかなか入手できず、ヤフーオークションでは10万円からのスタートでどうしようもありませんでした。
今でも10万円で出品されているかと存じます。
さて、大好きなチャイコフスキーの5番をなんとか聞けないものかと時折思い出してはなんともできず諦め、ヤフーオークションを眺めては10万円なんざあ、どうしようもできないと諦め……今少し音楽との距離ができてしまった中でふとYouTubeで目についた動画で全部横文字入力でしたので確認しますと、間違いなく朝比奈先生の最期の演奏会の音源でした。
即聞きました。
序奏の重さ……何事か不安で大変な重みがあり心中穏やかならぬ印象を改めて抱きました。
朝比奈先生の音でこのように重くのしかかってくる暗い音は初めて聞き、今さらながらに驚いてしまいました。
晩年のチェリビダッケさんの5番も同じく序奏は遅く音楽は進みませんが音は柔らかく明るい印象で朝比奈先生の音は暗くて展開部からどうなるのかという不安が取れないほど圧倒される表現でした。
しかし、展開部から重さは少し払拭され、徐々にエンジンがかかって完全燃焼するかのようで大変な力演、観賞後の余韻たるや、少し放心するかのような感覚でした。
感じたことを書いて参ります。
YouTubeで聞く限りでも、例によってアンサンブルに少しだけ乱れがあってヒヤリと致しますが、現場では粗さが目立ったのではないかと失礼ながら思われます。
縦の線が不揃いで無理矢理、なんとか繋がったような箇所、ホルンやファゴットがヒヤリとする音を出している箇所など2度ほど聞いてわぁぁ……と心中なりますが、それでもオーケストラの充実した響き、力強さは朝比奈先生の最後の……という落胆するような印象は皆無でむしろまだまだという、意欲的な気持ちをなおお持ちだったのが垣間見えるかのようです。
いつものフェスティバルホール、シンフォニホールではなく愛知県立劇場というCDで聞くいつもの雰囲気ではなく、力強く響くオーケストラに魅力を感じますし、フェスティバルホールでは時として荒々しく無機能的な音色の印象だったティンパニの響きがホールが違うだけでかように違うものかは、と感激しました。実に雄弁でした。
愛知県立劇場ホールのバランスの良い響きはホールの出来栄えが抜群で各楽器のバランスよく耳に届くよう巧く設計されているのではないか、と思われました。
嗚呼、くそぉ、四日市市に居た時分に……愛知県立劇場ホールであった演奏会に行ってみたかったです。
仕事、仕事、挙句人に色々親切にして自身はボロボロになって、しぬ手前までいきましたから、人間不信になって芸術どころではありませんでした……。
(おい! 神野良司、見ているか⁉︎ この儂のブログを。)
話を戻しましてティンパニ同様にトランペットも相当に素晴らしいアンサンブルでした。ホルンは申し訳ございませんが不安定な部分が多々ありますが、トランペットは凄かった!! 輝かしく決めてくれた感があり充実しています。本当に驚異的で印象に残りました。
2楽章は朝比奈節を聞かすところでしょうが木管楽器のミスが……という御仁もあるでしょう。しかし、味わいの深さは特別です。変にメランコリックにはなりませんが、ロマン的で良い雰囲気だと思います。
意外良かったのは3楽章、ワルツでした。
軽やかで意外にも朝比奈節を貫くのではなく、楽譜に従ったのような、ふんわりとした音色に耳がいきました。
その当時の演奏会のご様子が色々ブログで書かれていますが、体調不良はいかんともし難く、立っていらっしゃるだけでやっとだったというご様子が伝わっており悲しくなりますが、音楽だけを聞く限りそのようなことはなく、リピートして聞く人々をお励ましくださっておられるかのようなイメージを抱きました。
とかく長年気にしていた演奏が漸く聞けて良かったです。悲しい気持ちは今は癒えて、時折朝比奈先生の未見の演奏会、貴重なライブがYouTubeに多数あり、エールをいただいているようで今なおご存命(志村けんさんも同じです)のような感じがいたします。