指揮者の棒が分かりやすい、分かりにくい……千差万別様々でございますが、本日こちらで申し上げたいのはフリッツ・ライナーさんです。


ライナーさんの指揮は実に簡素で分かりすいと思いますが、ウィキペディアにあるようにリハーサルは大変厳しかったとあります(読んでいておっかないと思いました)。

それが動画内で想像できる場面があります。


動きが少ない分、楽団員の出す音をしっかり聞いている、確認しているのがよく分るからです。






偶々拝見した貴重な映像。初めて拝見しましたが何という鮮烈な「エグモント」序曲でしょうか。


チェリビダッケさんが戦後ベルリン•フィルを指揮した「エグモント」の映像と双璧といってもよいでしょう。


動のチェリビダッケ・静のライナー、といったところでしょうか。


さて、ライナーさんの演奏。

眼光鋭く、オーケストラを睨む瞬間が多々あって緊張の度合いは極めて高く、聞いているこちらも緊張してしまうほどピリピリした雰囲気がありますが、曲想と相まって大変見応えがあり、演奏も迫力があって素晴らしいと思いました。


簡素に拍を刻む、ここぞという時は感情の昂りを見せますがそれでも理性的、理路整然と指揮をされ、オーケストラの音を細かく聞いて確認しているようで怖さを感じます。


畳み込むような荒れ狂う最後の部分は本当に輝かしく、またそれまでの重苦しくも緊張感漂う演奏は他では決して味わうことが出来ないほど見事さでした。シカゴ響のアンサンブルの完璧さも特筆すべきです。

久方振りに充実した「エグモント」序曲を聞きました。





次いで見たベートーヴェンの7番の全楽章の演奏。

素晴らしいシカゴ響のアンサンブル、ライナーさんの指揮。こちらも貴重ですね。


全てを知り尽くして涼やかさ、余裕すら感じて、嗚呼これが本当のプロ中のプロ ーカラヤンがかつて指揮者もオーケストラも余裕で涼しく演奏して、聴衆を興奮させるのがプロだといっていましたがー なのだと思わされたほどでした。


輝かしいヴァイオリンの音色、木管楽器の明瞭さ•巧さがとても個人は印象に残りましたが、しかし、日頃の厳しいおっかないリハーサルの中で生み出されたシカゴ響のアンサンブルは見本とすべきほどの完璧さがあります。今でも全く遜色はありません。





指揮者の徳岡直樹先生もライナーについての動画でクールさよりも爽やかさがある、清き水のようだと仰っていましたが僭越ですが個人も同じように感じます。


ぎちぎちにトスカニーニさんのように徹底した感じではなく、ある程度音に膨らみと柔らかみがありながらそでも引き締まっている、シューマンがベートーヴェンの4番を「(2人の巨人に挟まれた)ギリシアのほっそりとした乙女」と評したことを想起されるような、しかし今風に申せば細マッチョのような均衡の取れた音、演奏がライナーさんの特徴ではないでしょうか。



そのライナーさんの代名詞的な録音、今でも絶対的な評価が確立しているバルトーク、シュトラウスは驚異的で他を圧するほどの完全さがあります。



音質も極めて良く聞きやすいですし、YouTubeでは場合によってはCDよりも高音質で鑑賞できる動画がアップされているかもしれません。




ライナーさんを個人が初めて聞いたのは「展覧会の絵」
でした。乾き気味のシカゴ響が耳につきますが、ああこれがシカゴ響かと思いつつも引き締まった表情、涼やかさと力強さが同時にあって個人は大変好きな演奏の1つです。



いささか高価ですが、こちらのハイブリッドSACDでは乾き気味のシカゴ響の響きが感じられず潤いすらあって、今まで聞いていた分とこのSACDとどちらが本当の音か考えましたが結論は出ず、好みの問題と思うことにしました。









他にも未だ未だあげなくてはならない演奏はありますが、いずれも仕上がりの完璧さでは類を見ない程で、オーケストラのあるべき姿が刻まれた演奏だと思います。



ライナーさんは素晴らしい指揮者だと思います。