フォーレの「レクイエム」、バッハのロ短調ミサ、マタイぐらいしか個人は聞いていませんが、爽やかなサラサラとした耳に心地良い音色、ソフトな音色の語り口の演奏が印象的だったミシェル・コルボさんがお亡くなりになりました。
合唱、声楽曲のスペシャリスト、という認識が長らくございました。
2000年前後に広島に居た時分に来日されて地方公演があり、バッハの「マタイ受難曲」を演奏されたことを記憶しています。テレビのCMも見ました。
市民オーケストラのヴァイオリン奏者の図書司書さんが演奏会に行って深い感銘を受けた、といっていました。
……個人も行っておけば良かったです。声楽曲の公演でしたから料金が割高で諦めていた、そもそもさほど声楽に興味があってどうしてもという気持ちがなかったのも確かです。しかし、自身の無知と狭量な精神がチャンスを駄目にしました!!
聞き始めの頃から長らくお名前のみを記憶して、フルトヴェングラーさんのような濃さ、アーノンクールさん、ブリュッヘンさんのような超個性、カール・リヒターさんのような重みがあるのではなく、クリュイタンスさん盤と共に銘盤の誉高い1回目のフォーレの「レクイエム」は後年SACD化された際に漸く聞いて深淵さ、崇高さが漂い品格の高さを感じ誰も彼もこの気高さを表現できないのではないかとすら思われました。
フォーレの「レクイエム」は後年数回録音されていますが正確にはその数を個人は知りません。こちらのCDは聞きました。
1回目の録音と比べますと、余分な力は抜けて、音楽はますます澄んで清らかで、軽快でむしろ感覚としては若さすら感じます。瑞々しい印象です。
美しいジャケットも刮目すべきですが、
やや早めでサラッとした印象でした。劇的な表情というよりもあくまでも声楽曲として演奏したという一面があるように思います。
ファーストチョイスに最も適している銘盤という感じですね。
バッハ入門でいきなり、リヒターさんやクレンペラーさんの「マタイ」を聞くと流石に重さを感じると思いますから、コルボさんはお勧め致します。
実はこちらのCDがコルボさんを初めて聞いた演奏でした。クレンペラーさんやブリュッヘンさんの演奏は知った後に聞いたコルボさんのロ短調ミサの再録音盤。ライブだったはずです。
『レコード芸術』でますます意欲的で軽快であるという旨の評があったと記憶していますがそれを見て聞いてみたいと思い購入しました。
確かに軽快さの中にも深みがある音があって決して軽率、軽過ぎるということは全くなく大家が知り尽くした音楽があるように思います。
フォーレ同様、聞き終わった後の余韻たるや満たされた気持ちになりました。
残念ですね。生々流転、ご高齢の大家、巨匠たちの訃報があり、一方で若い音楽家たちがオーケストラや歌劇場の首席やら音楽監督に就く。有名なコンクールの覇者になる、大手レコード会社の専属になったというニュースがあって、レコーディングも少ないながらもあるにはあり、新譜も発売はされています……。
CDが売れない時代、CDだけが試聴の媒体という形が希薄になってしまった時代になって、今の音楽家に深い関心が湧くのでしょうか。
YouTubeではその「今を聞く」ことが放送局などがデジタル配信をしてくださるおかげで鑑賞できますが、古くLPやCDで何度も何度も聞いた演奏と比べて各々が感じる気持ちとして、あるいは印象に残る度合いとしてはいかがでしょうか。
今が悪いとは思いません。ただ、何度も何度も聞いた演奏と比べて血肉になりにくい、1回聞いて、あ、そう……という素っ気なさというのはあるような気が致します。個人がそれだけたくさん聞いていないだけでしょうが。
巨匠たちとのお別れと時代の移り変わり。已むを得ません。
合掌