個人が見てみたいと思うかつてのテレビ番組をユーチューブにアップしてくださる方がおられるので今時間がある手前、楽しませていただいております。なんども申し上げますがありがたいことです。


さて、その中で以前から気になりながらようやく拝見できた1989年2月19日に放送された「題名のない音楽会」。
「芥川也寸志を悼む」と題されて、芥川也寸志先生を追悼する回でした……。
(1989年1月28日、肺癌の後遺症により63歳の若さでお亡くなりになりました。)






大河ドラマの「赤穂浪士」のあの有名なテーマが演奏されてから黛敏郎先生が涙を抑えてお話になられるお姿に驚きました……。

常に冷静沈着、理性的で温和な黛先生が盟友、音楽上の戦友を失った哀しみは今拝見してもいかばかりであったろうか、未だお気持ちの整理がついておられないさまがひしひしと伝わってきてなんともいえない気持ちになりました。


博学、知的で、ご父君様はなんといっても芥川龍之介ですから文達家でもあり、見た目もハンサム(立ち振る舞いがお育ちゆえかキザに見えそうですが全く違います。自然です。)で温和で紳士的でいらした芥川也寸志先生。

個人は深く知り得ない方ですが、その垣間見るお姿から偲びますと、作曲家、という括りで見ることができないほどのマルチな才気の持ち主であられたのではないでしょうか。


「題名のない音楽」では「赤穂浪士」のテーマの他に「交響管弦楽のための音楽」より第2部、新聞を題材にした四声の合唱曲と「オルガンとオーケストラの『響』」の一部が演奏されました。
いずれも聞いたことがなかったので勉強になりました。

「交響管弦楽のための音楽」は分かりやすく親しみやすい作風で以前にも指摘しましたがプロコフィエフ、ハチャトリアン、カバレフスキーの香りが当然ながらしますが、それらよりも爽やかで耳に心地良い音楽でした。カラッとした印象でした。

新聞の合唱曲は、聞いていて楽しいメロディと新聞の記事を歌うのですから面白さと妙を感じずにおれませんでした。
適当に新聞に目についた記事にメロディをつけるという発想はどなたもできません。

「オルガンとオーケストラの『響』」(こちらはサントリーホールの落成記念委嘱作品だそうです)は芥川也寸志先生にされては珍しく「響き」を重視されたような重い作品です。
サントリーホールでどのように音楽が響き渡り聞き手に伝わるのか、音楽の神秘性を追求されたかのような厳格な作品だと思います。


もっと長生きされてご活躍を願いたかった、と偲ばれる方々はたくさんいらっしゃいます。個人のブログは懐古し惜しむ内容が多いでしょう。今を見ないでどうするか、とご指摘されそうですがふとユーチューブを拝見しますと偉大な故人の方々がご存命かのように感じる場面、微笑ましい瞬間が多々あります。


映像では活き活きとされたお姿に嬉しくなります。現実を見たくない、という甘えがあるのかもしれませんません……。