人様に差し上げる前にもう1度あの深い感動を……、ということで朝比奈先生、大阪フィルのブルックナーの交響曲第8番を今聞いています(手前は一応他に所有しています)。

当初、この曲は理解に苦しみ長い間朧げながら聞いていましたし、楽譜が読めない個人は完全に理解出来るはずもありませんが、このCDのおかげさまで漸く全体的なメロディを理解し咀嚼できました。


忘れもしない、朝比奈先生がお亡くなりになって途方に暮れながらもCD中古ショップの雄、グルーヴイン広島駅前店さん(クラシック音楽のCDも充実しています。よくお世話になりました。)でそれはたくさん朝比奈先生のブルックナーのCDが安価で叩き売りされていましたから3、4、6、そしてこの8番を購入しました。

改めて朝比奈先生のブルックナー、音楽、軌跡を偲びたいと……。

実はポニーキャニオンレーベルの朝比奈先生のCDはお亡くなりになられた2001年末時点で殆ど未聞でした。

『レコード芸術』に添えられていたサンプル音源だったかしらん、それで聞いた当初音があまり好きになれず避けていました。
貧弱なプレイヤーで聞いていたから音をより美しく再現されなかったから手前は嫌悪感を抱いたのかもしれません……。


ヨーロッパのオーケストラの音からすると日本のオーケストラは軽過ぎて深みがなく、楽器そのものが貧弱だと失礼ながら思っていましたので長らく避けていました。


個人の強い偏見があって没後にその朝比奈先生と大阪フィルのブルックナーに漸く触れました。


特に8番はN響との名演が浮かんで参りますが、この94年7月24日第33回東京定期公演も全く素晴らしい演奏で聞いていて耳に心地よく音が朝比奈先生らしく柔らかく包み込まれるようです。

大阪フィルのミスは殆どなくいささか縦の線が合っていない部分がある程度でホルンが裏返る音をたてることはなくて、音色は極めて素晴らしくコンディションも相当に良かったのではないでしょうか。

『レコード芸術』で実際に聞いた方が感動された美しい思い出を述懐されていました(その思い出に浸ってCDを聞けていないとありました)し、朝比奈隆先生のご伴侶、町子奥様も演奏会が終わった後、隣のカップルが泣いていた姿を見られたとご本にありましたし、ある人は終演後、動けなくなったという旨もどこかで読みました。
加えて、このCDが後年のシカゴ交響楽団の登板に繋がるきっかけになってもいます。

実際久方振りに聞いた8番の充実ぶりたるや、N響の見事な出来栄えと比べても遜色がありませんが、背景を考えますと朝比奈先生と長らくご一緒に高みを目指して歩んだ大阪フィルとの名演に胸を打たれる思いです。

このCDがなかったら、未だに聞きはするがあまり深く理解できない曲で終わっていたかもしれないブルックナーの8番ですが、久方振りに感動しています。