指揮者のヘルベルト・ケーゲルは今年没後20年ではないか、とウィキペディアを開くと来年で20年、生誕100年の記念年です。

少しはこちらでも取り上げて書いていらっしゃる音楽ファンがおいでかと思われますが、少ないでしょう。

いかんせん実力の割には評価されていない悲しさを感じる惜しいと思われる巨匠です。


所謂、東ドイツ、ドレスデンのお生まれで、同じくドレスデン、ライプツィヒを中心に活動された指揮者でしたが、ドイツの東西統一後、ピストル自殺を図ってお亡くなりになりました。


ケーゲルさんのオーケストラ、といえばやはりドレスデン・フィルとライプツィヒ放送響ですが、近年ヴァイトブリックレーベルが幾分かCDをリリースしていますので、彼を聞く機会は以前より比較的増えました。



幾つか適当に貼り付けておきます。





意外に安く売られているケーゲルさんのベートーヴェン全集のSACD盤。来月……買えたら……と思います。




スタジオ録音の大人しいこと。すみませんが少し安全運転過ぎて、面白くないかもしれません。他にたくさんの銘盤がある中では弱い印象が拭えません。すみません。



この、マーラーの夜の歌は、とても聞き応えがありした。東京都響との共演盤ですが、すみませんケーゲルさんは時にキチガイと評されます。それが随所に顔を出して絶叫に近いオーケストラの悲鳴が響いて、聞いていて興奮を隠せません。










ヴァイトブリック盤で発売される前に、購入しました。




スケルツォの激しさは特に以前何度も聞いて虜になりました。

朝比奈先生、ヴァントさんを知る前にケーゲルさんの9番を知りましたが、スケルツォがあまりに凄くて他の楽章は滅多に聞かないという罰当たりなことをしていました。




一連のブルックナー、いずれも叫び狂うところが多々あり、ケーゲルさんの持ち味を十分に堪能できますが殊この6番は、他に曲に対してこれほど興奮している演奏を他に知りません。








こちらはかつてCD化されて一時期話題になりました。

《アルルの女》組曲は大好きですので、入手しましたが、鋭く前のめり気味な演奏で迫力がありスタジオ録音の生温さをあまり感じなかったです。



今は無き、CDショップのヴァージンメガストア広島そごう店で確か300円で叩き売りされていたCDで試しに購入。

しかし、なんとモーツァルトの40番の冒頭が流れるように始まってから、以来何度も引き込まれて聞きました。

個人的には理想的な第1楽章だと思います。ワルターさんよりも好きかもしれません。生き生きとした表情とさらっとした味わい……。 

ブリュッヘンさんやアーノンクールさんのように疾走しない、ベームさんのように勿体ぶらない、……決して彼らの40番が嫌い、駄目とは思いません。むしろ素晴らしいですが、個人的にケーゲルさんの素直さの前では……。

ケーゲルさんの力量を知った思い出の1枚です。


ブラームスは意外にも正攻法で立派な演奏でした。

オーケストラがライプツィヒ放送響で少しドライな感じの音質ですが、モーツァルトではそれが効果覿面のように聞こえます。



絶叫するブルックナー、マーラー、正攻法で重厚なベートーヴェン、ブラームスを指揮できる腕、更には現代音楽を多感に表現できる豊かな才能を持ちながら、心中に不安、芥川龍之介ではありませんがぼんやりとした不安が統一後にあったのかしりません、何故ピストル自殺をされるということをされたのかと残念に思います。




そのケーゲルさんの晩年の大仕事、ブリテンの《戦争レクイエム》。カップリングされたペンデレツキさんの《広島の犠牲に捧げる哀歌》が難しいにもかかわらず、ドラマティックに演奏されているのに正直驚きます。

 

その指揮者として円熟期を迎えて更にご活躍を、と音楽ファンからは思われていたであろう中、……。

ベルリン・フィルとの共演もあったかもしれませんし、ブルックナーの正規の録音がされたかもしれません……。


幸い、ライブはたくさん遺されてありCD化されておりますので、ケーゲルさんを鑑賞できます。


最後にタワーレコードさんが独自にかつての各社の銘盤をSACD化する企画があります。準新譜になると思いますが、ケーゲルさんのオルフ作曲《カルミナブラーナ》が発売されています。

意外な録音をSACD化するあたりにタワーレコードさんの文化・芸術を担っている面を感じ賞賛します。




ケーゲルさんを今後も偲びたいと思います。