クラシック音楽を聴き始めた時分にお世話になって、最近はお元気にされているのだろうか……と案じていたサー・アンドレ・プレヴィンさんが先月末日89歳でお亡くなりになったと、とあるサイトにありました。
珍しいベルリン・フィルとの共演も貼り付けておきます。
とうとう……その時がきたか……と思いました。
第一線からお退きになって久しいですが、一抹の寂しさがあります。
忘れもしない、ショスタコーヴィチの第5番はプレヴィンさん、ロンドン響のCDを購入して曲を咀嚼しました。
大友直人さん指揮、N響定期でその5番の演奏がテレビであり、なんて素晴らしい作品だろうかと思い急いでショスタコーヴィチの5番、5番、ショスタコーヴィチ……とCDショップを探したような記憶がありますが、偶々プレヴィンさんのCDが目に付いて、購入しました。
ジャケットは違いますが、何度となく聞いた思い出があります。見通しのよさ、アンサンブルの正確さなど刮目すべき1枚だと思います。
特別なカリスマ性、話題をかっさらうような、クライバーさんのような感じでなく、朝比奈先生のような宗教観を感じさせるような感じでもなく、淡々とそつなく指揮されるような柔らかさを感じていました。
N響との初共演の時も大仰に構える様子は微塵もなくごく自然に指揮されていたお姿が思い出されます。
プレヴィンさんのロンドン響との仕事は今でも広く愛好家に愛聴されている演奏があります。
余談ですが若い時分に、インタビュアーからどちらのオーケストラの指揮者になりたいですか。ウィーン? ベルリン? フィラデルフィア?
と聞かれたところ、
ロンドン交響楽団です。とプレヴィンさんは即答されたそうです。結びつきを感じさせる素敵なエピソードだと思います。
いくつかプレヴィンさん、ロンドン交響楽団の名盤をご紹介します。
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チャイコフスキーの三大バレエの全曲は端正な出来栄えで、膨よかな音楽が耳に心地よいですし、これらバレエのCDでは絶対に外せません。
昨年末はプレヴィンさんのくるみ割り人形をクリスマス近くにハイライトで聞いたばかりでした。
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ラフマニノフの2番を世に知らしめた誉高い名盤です。2番はこれじゃないと駄目という方もいらっしゃるのではないでしょうか。
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ホルストの惑星は意外なほど素晴らしい出来栄えだと思います。ロンドン響のアンサンブルの妙が光ますし、プレヴィンさんがこれまた意外にもグイグイ引っ張っているような感じも受けます。
忘れ難い仕事として、ヴォーン=ウィリアムズの全集。この作曲家の熱心な聞き手ではありませんが、1番と2番は時折聞いていました。
1番は《海の交響曲》といわれていますが、壮大な交響曲で隠れた大傑作だと思います。もっと演奏されてもよいと思います。
余談ですが、ヴォーン=ウィリアムズのスペシャリストがかつて、イギリスには多数いました。バルビローリ卿しかり。ボールト卿しかり。近年ではサー・リチャード・ヒコックスさんあたりが左様だと思いますが、彼らは既に鬼籍に入っており、実際にバルビローリ卿とボールト卿は作曲家と縁があったのでエッセンスを自然持っていたのでしょうが、その英国の伝統も今や昔の話……ということなのでしょう……。
ヴォーン=ウィリアムズの作品は日本ではグリーンスリーヴスによる幻想曲ばかりが贔屓にされていて交響曲など滅多に取り扱ってくれない有様で寂しい限りです。
さて、プレヴィンさんはそつなくこなす指揮者と申しましたがウィーン・フィルとのR・シュトラウスの一連の録音も特筆すべき内容でオーケストラの美しい音色を引き出して、素晴らしいと思いました。
また、N響の首席指揮者として3年間在籍されましたが、必ずしもN響の出来栄えには感心できず、空回りしているような虚しさをラジオから聞いてしまいました。N響のやる気の問題は以前から気になっていましたが1番悪かった時期にプレヴィンさんは首席になられたのだと思います。
この時は随分と恰幅がよくなり、座って指揮されるお姿を拝見して、齢を重ねたと感じておりました。
それから第1線から身を引かれて数年経ち、SACD等再発売された名盤等に触れて時折どうされていらっしゃるだろうかと案じていました。
ミュージカル、映画音楽の作曲家としても名声があり、さながら音楽の使徒という印象のマエストロでした。
クラシックの作品ですと《ハニー&ルー》が爽やかで個人は気に入っております。
長くなりましたが、最後に晩年のN響とのラフマニノフ2番の第3楽章を貼り付けておきます。嗚呼、この音楽のように黄昏た世界にプレヴィンさんは行かれるのか……と感慨深い思いでおります。
珍しいベルリン・フィルとの共演も貼り付けておきます。
オーケストラの特性を自然に引き出す手腕は随一の才能だと思います。
合掌