作曲家ブルックナーを冗長的な感じがして難しくて避けている、嫌いというクラシック音楽の愛好家は少なからずいらっしゃると思いますが、では好きになるあるいは入門としてどうすればよいのか、という問いに対して『レコード芸術』でお馴染みの前田昭雄先生のたまはく、スケルツォを全部聞いて気に入った交響曲を聞きなさいとあり、それを実践した方は9番を選んだ(! とマークまで添えられてありました)そうです。

民族舞曲という趣がありのどかな自然の風景が浮かぶようなブルックナーのスケルツォですが、かつてN響アワーで池辺晋一郎先生が「ブルックナーのスケルツォは妖精が舞っているような感じがする」と3番が放送された時におっしゃっていましたが言い得て妙だと思います。その3番はブロムシュテットさんが珍しい第1稿を取り上げた時分だと記憶しています。





第2主題になるのでしょうか。1:00あたりからのヴァイオリンの旋律、続くフルートの旋律があたかも妖精を表現しているように聞こえます。




上で少し触れた9番のスケルツォ。何度聞いたことでしょうか。1番最初に気に入ったスケルツォでもありますが、重厚ですが面白さも感じます。面白いというのはクレイジーさを感じるという点であります。

0:36あたりからの合奏弦楽器が目一杯フォルテをかまし、続いてトロンボーンがリズムを刻み、ヴァイオリンに続く異様な迫力のあるスケルツォ。興奮せざるをえません。

貼り付けたヨッフムさん ミュンヘン・フィルの演奏はとても素晴らしくこれも何度も聞きました。







第7番も独特な雰囲気があります。冒頭の弦楽器がリズムを刻んでトランペットが旋律を奏でますが、渋いですね。

弦楽器のリズムはかつての2ちゃんねるで “ばけらった”と表現されていました。確かにそのように聞こえます。

トリオ、中間部の音楽は深い慈愛に満ちた感じがします。




興味のある方はこちらもご覧ください。バルビローリ卿が弦楽器のリズムにいちいち文句をつけてなかなか先に進めないという貴重なリハーサル……。

♪ばけらった、ばけらった……首を振る、指揮棒を叩く……。






個人が最近特に気に入っている1番のスケルツォ。鉄砲水のように音楽が流れ込んでくるようで今は1番好きなスケルツォです。




かつて初期のブログにこのスケルツォ斉藤由貴さんが若い頃にご出演されたCMに使用された旨を書きました
。最後の部分が使用されています。

9:33あたりから始まります。しかし時の隔世とはいったものであのころにありがたがっていた品物が今では……。

渋い選曲だと思います。






5番は重厚です。ごつごつした感じがします。
朝比奈先生の得意とされた5番で下に貼り付けた演奏は90歳になられたバースデーコンサートです。

スケルツォは57:03あたりから始まります。57:26あたりから弦楽器が旋律を演奏しますが少しテンポを落としてゆっくり歌うのがより効果的に聞こえます。実際朝比奈先生もそのようにされているようです。

中間部に入る前に、♪タ タ タ タ タ タ タ タ タ タ タ タ タン と三連符の嵐が続きますが、こちらもクレイジーな印象がします。聞いていていざその場所で指揮すると間違えてしまいます。1人で恥ずかしい思いをします。

この時の朝比奈先生のご壮健なこと。こういった特別な味わい、個性を持った指揮者が少なくなりました。





特に上記であげたスケルツォは特に好みです。聞いていてブルックナーの狂気を感じますし、興奮します。