奈穂は風呂場にバスタオルや替えの下着 制服を持ち込むとシャワーを浴びた

全身を隈なく洗っているとだんだん気持ちが落ち着いてきた

(でも…)

と奈穂は思った

いくら気持ちが落ち着いても それは学校に行く気になっただけで あの変態男の言う取引に応じる気になったわけではない …と

(まったく 先祖がどうだこうだって 今のあたしには関係ないじゃない?)

風呂場から出る頃にはそこまで強気な自分に成れていた

洗った髪をドライヤーで乾かしながら奈穂はきっぱりと断る決心をして ダイニングルームへ入って行った

「おはよう 奈穂ちゃん よく眠れた?」

美奈子が朝食を並べながら奈穂に笑いかけた

(違う…ママじゃない)

美奈子の物言いを聞いた奈穂はそう思った

ママならこんな言い方しない…いままでのママなら…

そう思いはしてもそれをすぐ口には出来なかった

「どうしたの?」

疑問を口にしながらも表情がかわらない美奈子に薄気味悪いものを感じながら

「…あ…あいつは…?」

と美奈子の問いを無視して聞いた

「あいつって?」

「…昨日の…遠縁の…男…」

「遠縁て…朗ちゃん?」

「そっ…そのロウとかいう…変態」

「まっ…変態だなんて言っちゃいけませんよ…女の子でしょ?」
と言う美奈子の表情はまったく変わらない

「だから…どこ?」

急く様に聞く奈穂に美奈子は

「祐太と居間にいるはずよ…ご飯出来るまで待つって」

「そ…」

奈穂はダイニングを出て居間に入って行った