龍平は
蚪真たちの少し後ろの席で二人のやり取りを聞いていた

そして
話が兄弟の下りまでくると加藤と蚪真 両方を交互に見たあと 皮肉な薄笑いを浮かべ また目を伏せた

加藤が行ってしまったあと
おもむろに立ち上がると
そのまま出て行った
蚪真は
龍平が動く気配を感じたが
まったく後ろを見る事もなく
受付の壁の飾り時計の針が動くのを目で追っていた



外に出た龍平は
そのまま駐車場に置いてあった車の運転席に乗り込むと
ポケットから携帯を取り出した

キーを押し
画面が切り替わったのを確認してから耳にあてる

しばらく
コール音が続いたあと相手が出た

「もしもし…龍平?」


「香月(かづき)… 第一段階完了
ターゲットと蚪真はまだ病院だ

GPS作動確認頼む」

「あぁ…
位置特定出来てるよ
上手くいってるみたいだね?」
         「今の所はね
でも…どんな不測の 事態が起こるかわからないから
そこは気を引き締めていけよ」

「わかってるって… 他には?」

「ないな… そっちは?」

「あぁ…
昨日 クイーンから電話あって
当分 日本にいるらしいからって
生島さんによろしくって…

蚪真や龍平の事も聞いてきたんで
今 新しい仕事してるって言っておいた

頑張ってねって言ってたよ」

「へぇー
珍しい めったにそんな電話寄越す事ないのに…」

「でしょ?
あっちで何かあったのかもね…

そのうち生島さんから連絡あるんじゃない?

そんな所かな…」


「了解
俺は当分こっちに張り付くから
連絡係よろしく」

「またね」

携帯を切り
ポケットにしまうと 両手をハンドルに乗せて
龍平は外来入口を見つめていた