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<前回までのあらすじ>

【はるのり】は、裁判で2年の有罪判決を受ける。
ただし、執行猶予付きだったので、ようやく釈放されることになった。

でも、【はるのり】の心には、たとえ執行猶予とはいえ、刑を受けるべき
犯罪者になったことは確かだと、自分を責めた。


 

拘置所に戻ると、
独居房には、入ることはなかった。
 

拘置所の入所した初日に入った地下の大きな場所に行かされた。
畳が広く敷き詰められた一角に行き、
そこで、【はるのり】の私物がすべて返された。
 

そして、一人の刑務官に連れられ、
エレベーターに乗り、1階に来た。
 

最後のエレベーターは、壁を向くようには言われなかった。
なので、何階なのかがわかった。
そして、廊下を歩いた。
 

遠くに光が見えた。
途中、細いトンネルのような車道を歩いたが、

そこを出ると、もう拘置所の出口だった。


私物の入った大きな紙袋を持ちながら、

どこかで人目のつかない静かな場所を探し、

そこで今生(こんじょう)の別れをしようと、
ゆっくり歩き始めた。
 

拘置所の独居房での生活が、
長く続いていたので、歩くことも大変だった。
 

(本当に、人間の体は、こうも弱くなるのかと、驚きました。)
 

ヨタヨタと、10歩ほど歩くと、
よく知っている姿が目に飛び込んできた。

 

【はるのり】父だった。
 

穏やかな顔をして、立っていた。

 

父は、ゆっくりと、【はるのり】に近づき、ポンと肩を叩いた。
そして、優しい声で、こう【はるのり】に言った。
 

「お疲れさん。」
 

その言葉を聞いたとき、瞬時に、【はるのり】は思った。
 

(もうこの父を悲しませてはいけない!)

 

父は、老齢の体を押して、
何時間も拘置所の前で、
【はるのり】が出てくるのを待っていてくれたのだ。

 

父の直感で、【はるのり】が死ぬことが分かっていたのだ。

それを食い止めるために、
何時間も立ってくれていた。

 

【はるのり】は、死ぬことを諦め、
父と一緒に、実家に帰った。

【はるのり】は、父の深い愛に、救われたのである。

 

 

 

 

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↓↓↓(抜粋)

 

タイトル:『光の追憶』