あっという間に、大晦日が来てしまいそうだ。
大掃除もしたい。
新年にむけて、身も心も軽やかになりたいのだ。
うちの息子たちの部屋は、整理整頓が全くなっていない。
クローゼットには、洋服のほかに、釣竿や、ボール、乾電池、消しゴムなどいろいろなものが、詰め込まれている。
長男の部屋のクローゼットに、カバンのひもが挟まっているのが気になり、扉を開いた。
すると、フェルトで作られた、黄色の星のマスコットが、コロンと転がり出てきた。
私は、それを見て、おもわず涙目になってしまった。
クローゼットの中の、大きなビニール袋には、長男の大切な宝物がいっぱいに詰め込まれている。
転校する時に、同級生からもらったものだ。
クラスの子供達の一人一人から、贈り物をいただいた。
洋裁の得意なお母さんが作ったリバーシブルの袋。
ブルーのフェルトの手帳カバー。
段ボール製の金メダル。
数々のメッセージ…。
たくさんの優しい気持ちがこめられた贈り物だった。
埼玉の学校で過ごす最後の日に、わたしは先生方やお友達に挨拶にいった。
長男、次男とも、転校したくないと、一度も駄々をこねなかったので、ずいぶんと気が楽だった。
長男の学級をのぞくと、授業はお別れ会の際中だった。
最後の授業は、ボール遊びの時間になっていて、長男は、大きな声援を受けていた。
クラスのみんなが、声を合わせて、うちの子の名前を呼んでいる。
毎回、ボールが、うちの子にまわってくる。
声援はやまず、ものすごい盛りあがりだった。
私は、こんなふうに心をかき乱されるとは、思っていなかったのだ。
この場所から、連れ出すのか…と、はじめて、ことの重大さを実感した。
終業の鐘がなり、みんなが席に着くと、目をこすり始める子がでてきた。
ひとり、またひとりと泣き声が起こり、次第に、クラス全体が泣き声でいっぱいになった。
教室から溢れだして、廊下まで響く。
他のクラスの子供達が、のぞき込み、もらい泣きをする子もいた。
感情は伝染する。
最後は、号泣する子が数人、洗面所に入っていった。
その間、子供達をなだめる先生の言葉が何度もくりかえされていた。
先生に、お礼の挨拶にいくと、とても疲れて見えたのだ。
見送る子供達の気持ちも、引っ越していく長男の気持ちも、両方とも、大きくがっしりと受け止めてくれているようだった。
私は、先生とお友達への感謝を言葉にしたが、伝えきれなかったと思う。
仙台に来てから、長男は、いただいた贈り物をすぐに使いだした。
時々、眺めたりしていることもある。
もう一年が過ぎ、子供達は毎日、元気に仙台の学校に通っている。
でも、ふるさとはどこ?と聞かれると、困ってしまうのだ。
仙台でいいと思うよ、と私はこたえる。
生まれたのは、東京。
最初の住まいは、三重だった。
一番長く住んだのは、埼玉なのだ。
けれど、ふるさとは、どこでもいい。
好きな場所が、ふるさとだと思ってくれていいのだ。
好きな場所とは、大切な人達がいるところだ。
ふるさとが、たくさんあるのは、すてきなことだと、子供達に伝えよう。