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ギフト〜なな色の羽

私の中から産まれたがった言葉やお話を書いています

 12月は、とてもいそがしい。

 あっという間に、大晦日が来てしまいそうだ。

 大掃除もしたい。

 新年にむけて、身も心も軽やかになりたいのだ。

 うちの息子たちの部屋は、整理整頓が全くなっていない。

 クローゼットには、洋服のほかに、釣竿や、ボール、乾電池、消しゴムなどいろいろなものが、詰め込まれている。

 長男の部屋のクローゼットに、カバンのひもが挟まっているのが気になり、扉を開いた。

 すると、フェルトで作られた、黄色の星のマスコットが、コロンと転がり出てきた。

 私は、それを見て、おもわず涙目になってしまった。

 クローゼットの中の、大きなビニール袋には、長男の大切な宝物がいっぱいに詰め込まれている。

 転校する時に、同級生からもらったものだ。

 クラスの子供達の一人一人から、贈り物をいただいた。

 洋裁の得意なお母さんが作ったリバーシブルの袋。

 ブルーのフェルトの手帳カバー。

 段ボール製の金メダル。

 数々のメッセージ…。

 たくさんの優しい気持ちがこめられた贈り物だった。


 埼玉の学校で過ごす最後の日に、わたしは先生方やお友達に挨拶にいった。

 長男、次男とも、転校したくないと、一度も駄々をこねなかったので、ずいぶんと気が楽だった。

 長男の学級をのぞくと、授業はお別れ会の際中だった。

 最後の授業は、ボール遊びの時間になっていて、長男は、大きな声援を受けていた。

 クラスのみんなが、声を合わせて、うちの子の名前を呼んでいる。

 毎回、ボールが、うちの子にまわってくる。

 声援はやまず、ものすごい盛りあがりだった。

 私は、こんなふうに心をかき乱されるとは、思っていなかったのだ。

 この場所から、連れ出すのか…と、はじめて、ことの重大さを実感した。


 終業の鐘がなり、みんなが席に着くと、目をこすり始める子がでてきた。

 ひとり、またひとりと泣き声が起こり、次第に、クラス全体が泣き声でいっぱいになった。

 教室から溢れだして、廊下まで響く。

 他のクラスの子供達が、のぞき込み、もらい泣きをする子もいた。

 感情は伝染する。

 最後は、号泣する子が数人、洗面所に入っていった。

 その間、子供達をなだめる先生の言葉が何度もくりかえされていた。

 先生に、お礼の挨拶にいくと、とても疲れて見えたのだ。

 見送る子供達の気持ちも、引っ越していく長男の気持ちも、両方とも、大きくがっしりと受け止めてくれているようだった。

 私は、先生とお友達への感謝を言葉にしたが、伝えきれなかったと思う。


 仙台に来てから、長男は、いただいた贈り物をすぐに使いだした。

 時々、眺めたりしていることもある。

 もう一年が過ぎ、子供達は毎日、元気に仙台の学校に通っている。

でも、ふるさとはどこ?と聞かれると、困ってしまうのだ。

 仙台でいいと思うよ、と私はこたえる。

 生まれたのは、東京。

 最初の住まいは、三重だった。

 一番長く住んだのは、埼玉なのだ。

 けれど、ふるさとは、どこでもいい。

 好きな場所が、ふるさとだと思ってくれていいのだ。

 好きな場所とは、大切な人達がいるところだ。

 ふるさとが、たくさんあるのは、すてきなことだと、子供達に伝えよう。