七月の三連休のなか日、梅雨の合間をぬい、神社巡りをしてきた。
名取熊野三社は、熊野那智神社、熊野本宮社、熊野神社からなる。
紀州熊野三山それぞれから分霊され、宮城県名取市に建立されている。
まずは、高館山の山頂にある熊野那智神社へと向かった。
道すがら、さっそくカラスの出迎えを受け、わたしのテンションは一気に上がった。
八咫烏(やたがらす)は熊野の神様のお使い。
サッカー日本代表チームのシンボルにもなっている、勝利へと導く霊験あらたかな眷属、三本足のカラスだ。
カラスは嫌われ者とされることもあれば、知恵者として扱われることもある。
物語の中ではメッセージャーとして描かれることもあり、黒猫のように魔的で神秘的だ。
また、この神社には数匹の猫が暮らしていて、虎猫が威厳のある様子で参道を歩きまわっている姿が見られた。
御神木は、樹齢900年とも言われる杉の大木で、「山一(やまいち)」と呼ばれ、国道からも眺めることができるそうだ。
他にも「高館連理の杉(たかだてれんりのすぎ)」が御神木として祀られている。
二本の別々の杉が途中で繋がっていて、縁結び、夫婦和合の象徴として信仰されている。
そばには大輪の白百合が咲き、青紫色の紫陽花も見られた。
大きな黒アゲハ蝶が白百合の蜜を吸っては、舞い上がり、つがいでくっついては離れてを繰り返し飛びまわっていた。
今生を超え、永遠の契りを交わす舞を踊っているかのような幻想をいだかせる。
この神社は山上にあり、さわやかな風が吹きぬけ、わたしの心も身体も清められていくようだった。
次に、山を降りて向かったのは熊野本宮社。
狛犬の大きな赤い口が印象的だった。
人の気配のない静まり返った境内に立っていると、自分自身の輪郭があいまいになり広がっていき、風景に溶け込んでいってしまうような感覚があった。
最後、三社目は、熊野神社。
三社の中心となる神社だ。
こちらには、弁財天さまをお祀りした池があり、源頼朝公腰掛之石もある。
長い渡り廊下には色とりどりの風鈴がたくさん吊るされていた。
風が強く吹いていて、ガラスをかき鳴らす音が響く。
絶え間ない連続音が、この場を特別に神聖な場所に感じさせる。
日が良いのか、和装姿の若いカップルが撮影に来ていた。
花嫁は朱赤の打ち掛けがよく似合っていて、初々しい。
『おめでとうございます 末長くお幸せに』と声をかけると、黒の羽織姿の花婿が幸せいっぱいの笑顔を返してくれた。
風がやみ、風鈴の音がとぎれた。
わたしは目を閉じ、風の流れを感じてみる。
風鈴の音の終わりと始まり、その間の束の間の静寂に、しばらく耳を澄ました。
高館山で見た蝶がふと頭をよぎった。
あの黒アゲハ蝶のつがいは、幻だったのではないだろうか。