たくさんの色が並ぶパレットのなかで、紺青色(こんじょういろ)は、圧倒的に他のものより、小さくなっている。
紺青色は、暗い紫みの青色で、プルシアンブルーと呼ばれる。
私は、この色に、ほんの少し黒色を混ぜて、背景色に使うことが多い。
このとても暗く神秘的な青色を、白い画用紙に塗り付けていくと、次第に心が静まっていく。
青い闇に閉ざされた画面から、花や蝶が白く浮かび上がる。
闇の中に咲く花は、はかなげだが、命の輝きが感じられる。
蝶は、その輪郭がくっきりと浮かび上がるが、幻のように消え去ってしまいそうに見える。
闇を背景に描くと、そのものの存在感が際立つ。
さらに、内側に秘めた個性までもが、訴えかけてくるように感じるのだ。
もう、真夜中を過ぎた。
窓の外の闇の中で、高層ビルの赤いランプが瞬き、浮かんでは消える。
街の半分はもう眠りについたのだろう。
静かな夜。
私の子供達も眠っている。
私は、扉をそっとノックし、灯りを落とす。
夜は、優しい。
闇は、贈り物。
昼間の明るさに疲れた心と身体を休ませてくれる。
闇に包みこまれると、次第に細部は見えなくなっていく。
本当に見る必要があるものは、これなのだと、わからせてくれる。
心の内へ目を凝らせば、そこに存在していることさえ気づかなかった、星の光を見つけることもある。
私は、闇を感じ、描いていく。
そこに何が現れるのかを見つめるのだ。