わたしたちの出会いは本当に自然だった。
一緒に駅まで帰ろうって彼女に声をかけられ、わたしはうれしくて、うれしくて精一杯の笑顔を返した。
たあいのない話が楽しくて、ふたりで笑いあった。
彼女はとても明るくて、素敵な声をしていた。
それなのに、ある時、思いがけず彼女が泣いている姿を見て、わたしはとても動揺した。
励ましやアドバイスは、彼女の心に届かず、ずっと泣き続けていた。
わたしの発した言葉が、より彼女を追い詰めているのではないかと感じて、ごめんねって言ったら、彼女は泣き笑いして、ちがうよと言った。
わたしはとても悲しくなった。
わたしの言葉で彼女を励ませると勘違いして、
わたしの言葉で傷つけてしまったと勘違いした。
泣いている彼女のまわりをぐるぐると回り続けるピエロみたいだった。
彼女の悲しみは彼女の悲しみで、わたしの悲しみはわたしの悲しみなのか。
わたしは無力なピエロの仮面をはずして、うなだれ、悲しみの中へとしずんでいった。
気づくと、わたしは荒波の中で溺れかけていた。
なんとか助かろうと、もがくほど苦しさは増していく。
波間に彼女を見つけ、自分の苦しみから目をそらし、彼女へと手を差し伸べたものの、さらに苦しみは増していった。
このままでは溺れてしまうと、われに返ったわたしは彼女と手を取り合って、襲いかかる波に身を委ねた。
カオスのような波に揉まれながらも、あらがわずに、わたしたちはその流れに乗っていった。
もっと深くへと入っていくと、世界から音が消えた。
そこは悲しみの海の底ではないようだった。
重力もない。
ただ、静寂があった。
どれくらいの時がたったのか、遠くから鐘の音が聞こえてきて、わたしたちは手を離した。
現実へ戻ったわたしたちは、また、たあいのない話をして笑った。
出会いの時よりも、ずっと楽しくて安らいでいる。
今度はわたしから彼女に声をかけようか。
一緒に駅まで帰ろう、って。