実家ではメスのチワワを飼っている。
年に一回しか顔を合わせないので、毎回、吠えられる。
身体に触ろうと手を伸ばせば噛みつこうとする。
鼻にシワを寄せて唸る姿は、悪魔だ。
胸に、真っ白な十字架の模様があるので、父は天使の生まれ変わりだという。
かつては、メスの柴犬を飼っていた。
私が会社から帰ると、いつも全身で大喜びで飛びついてくる。
お気に入りのスカートをビリビリに破られたこともあった。
わたしも彼女の尻尾をヒールで踏んづけて、哀しい声でなかれたこともあった。
とてもいい相棒だった。
仙台にも犬カフェがあるのだが、行ったことはない。
一度、ワンちゃんの名前を呼んで頭を撫でてしまったら、何回も通うことになってしまうだろう。
先日、「坂上どうぶつ王国」という番組を見たのだが、坂上忍さんは保護犬や猫を譲渡する活動をしている。
保護された動物のなかで、極端に人に怯えたり、心を閉ざす犬の姿を見たりするとせつなくなる。
安心な環境で心が癒され、穏やかな表情になっていく姿にはほっとする。
この番組の中で、ギン太郎という推定年齢10歳程度のオス犬がとても心に残った。
飼い主と思われる人物が車から犬を下ろし、立ち去る姿が目撃されていたという。
捨て犬を保護した場合、落とし物という扱いになるそうだ。
届出後、3ヶ月間飼い主が見つからなければ引き取ることができるらしい。
捨てられた犬が可哀想でならなかった。
しかしながら、この犬、ただものではなかった。
女性スタッフに激しく飛びつき甘える。
気に入った女性がそばを通れば、体当たりする勢いで柵にぶつかって行く。
散歩すれば10数回のマーキング。
なるほど、この犬、ギンギンのギン太郎と、坂上忍さんが名付けるだけある。
ギン太郎は、何が起きたのかわかっていないかもしれないが、傷心の時間が少ない、または無かったかのように見える。
彼の強運、生命力の強さは、暗さや悲しみを吹き飛ばす。
これが人間だったなら、なかなかこんなふうにはいかない。
今までいた人や環境と別れ、未知の場所に目まぐるしく放り込まれる。
無くしたものが、かけがえのないものなら、なおさら立ち上がるのに手厚いサポートと時間が必要なのだ。
ギン太郎のように動物の持つ強い生命力で、本能で、裸一貫で生きることはむずかしい。
ただ、その姿は、極端とはいえ、こういう生き方もあるのかもしれないと、心に引っかかるものだった。
わたしは相棒の柴犬をずっと昔、事故でなくした。
思い出すたびに、たくさんの思い出や後悔が押し寄せてくる。
名前は〝まりも〟
今もとても愛している。